鍋野敬一郎氏「ERP再生計画」第20回:ERP+RPA/AIで実現するRPAサービスの進化

□はじめに

 最近注目されている最新テクノロジーのひとつに、AI(人工知能)があります。しかし、AIは“バズワード”として扱われるケースも多く、その機能や内容が誤解されていることも多いようです。AIを使いこなすポイントは、「良いデータを収集するのが必要不可欠」なのですが、ゴミのようなデータを大量に集めてAIに読ませてもAIがなんとかしてくれるという誤解です。このコラムでは、ERP+RPAというキーワードを軸にERPの新しい活用シーンについてご紹介してきましたが、今回は前回の流れを引き継いで、ERP+RPAによるお客様サービス強化というテーマでお話いたします。ではなぜ冒頭でAIの話が出てくるのか分からない!?という方も多いと思いますが、その理由は「RPAは現在進行形で進化していて、AIとRPAが次第に融合していく」という意味です。そんなの未来の話じゃないの!?と思うかもしれませんが、外資系ITベンダのSAPやOracleは既にERPにAIとRPAを組み込んだ製品を発表しているだけでなく、既に導入事例としてPoC事例を紹介しています。この「ERP+RPA/AI」のことを、オラクル社では“Pervasive AI(パーベイシブAI)”、SAP社では“Intelligent Enterprise(インテリジェントエンタープライズ)”という言葉を使っています。こうしたソリューションが登場したのは、ここ2,3年です。日本ではまだあまり馴染みがない領域ですが、ERPは日本でも既に幅広く導入されているため、ここに蓄積されたデータをRPA/AIで活用すればさらに便利になるというソリューションです。今回は、「ERP+RPA/AI」という切り口でその内容をご紹介いたします。

■ERP+RPA/AIというソリューションで何が出来るのか

 「ERP+RPA/AI」の事例は、実は既に国内企業でも事例紹介されています。

 昨年、日商エレクトロニクス社がセミナーなどで紹介した総合商社の双日様で、調達処理をERP(SAP)とRPA(Blue Prism)を連携した自動処理ソリューションの構築で紹介されています。これは、複数の仕入先から届く納品書(受入検収の情報)の文書類をスキャンして電子ファイル(PDF)に変えて、ここからOCR(光学文字認識:手書きや印刷された文字を、イメージスキャナやデジタルカメラによって読みとり、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術)で読み取って、ERPの中にある発注情報と紐づけて支払処理を自動かするという仕組みです。

 ※出所:https://www.nissho-ele.co.jp/press/2018/1807_sojitz.html 

 これまでにこのコラムでご紹介した通り、ERP+RPAはERPを中心としたデータ入力やその結果から伝票作成やレポート作成を自動処理することができます。双日様のケースでは、入力データの元ネタがFAXなどで送られてくる納品書や検収書などのドキュメントでした。これまでは、担当者が手入力していたところをAI-OCRというシステムを使って自動入力処理に置き換えて効率化に成功したというものです。このように、ERP+RPAに更にAIを組み合わせることでより高度な利用が可能となります。現在のRPAは、製品進化の第一段階「クラス1」というレベルにあります。これが、「クラス2」にレベルアップするとデータからAIの機械学習機能を利用して判断する機能が追加されます。これまでのRPA利用では、決められた処理をそのまま行うだけなのでデータにエラーがあるとそこで停止してしまいます。しかし、「クラス2」のRPAでは、エラーの内容によってAIの機械学習機能が状況を判断して、別の手段で自動処理を行うというようなことが可能となります。前回紹介したSFAを連携させたケースでは、SFAの中にあるお客様データとERPの中にあるデータをマッチングさせて、マッチした場合は自動処理を行うというものでした。こうした状況判断の機能は、RPAとAIの機械学習による連携で実現することが出来ます。

図表1:RPAの進化 3つの段階(クラス1、クラス2、クラス3
図表2:RPA3つの段階の定義について

■ERP+RPA/AIで実現されるRPAサービスとは?

 RPA/AIでは、「状況による判断が可能となる」とご説明しましたが状況とは、収集されたデータを解析した結果にもとづいた条件分岐という意味になります。つまり、条件分岐するのに必要なデータを収集する必要があります。ここで効果を発揮するのは、AIの1つの機能「機械学習」です。「機械学習」とは、コンピュータがデータから反復的に学習し、そこに潜むパターンを見つけ出すことです。AIによる判断の判断精度を決めるのは、良いデータを大量かつ継続的に学習することです。つまり、ERPの中に蓄積されている良質で大量のデータを利用することで、AIの判断精度が向上してシステムがどんどん賢く使いやすくなります。SAP社が提供するAI製品群であるSAP Leonardo(エスエーピー・レオナルド)についてのコンポーネント構成と現在提供されているシナリオについてご紹介します。

図表3:SAP社が考えるERPとAIの連係による新しいインテリジェントアプリ

 SAP社は、ERPに蓄積された膨大なデータを利用して、ここに機械学習やRPA、ビッグデータ解析やブロックチェーンといった様々なコンポーネントを組み合わせることで新しいサービス強化の仕組みを業務シナリオごとに提供することを考えました。これは、ERPの会計機能にある“入金処理”という業務を蓄積されたデータを使って強化する“インテリジェントアプリ”という考え方です。機械学習の機能で、これまで入金処理で人間が判断しなければならなかった処理を自動処理して、転記などの煩雑なオペレーションはRPAで自動処理して、過去データとの比較や計画作成支援などをビッグデータ機能で行うというような「データ処理で可能となる機能強化」を新しいサービスとして提供しています。この考え方の面白いところは、ERPを使えば使うほど、これと連携するAI製品群が賢くなってオペレーションや楽に簡単になっていくという仕組みです。ERPに入っているデータが少なければその効果はほとんど無いのですが、長く使えば使うほど蓄積されるデータも増えるためこのデータを読み込んだ機械学習とRPAで効果を発揮する仕掛けです。その効果を最大化するために、例えば“入金処理”という1つのシナリオをユーザー目線で機能アップデートします。


図表4:「SAP Cash Application」のイメージ(機械学習がERPの機能をアップデート)
ERPの“入金処理”が、RPA/AIで機能が更に進化する

こうした1つ1つのシナリオが、“インテリジェントアプリ”というテンプレート的なモデルとして提供され、これをひな形としてユーザー企業それぞれが固有の違いやこだわりを追加して利用します。こうした考え方は、他のベンダも同じです。IBM社のIBM Watsonについても「学習済みWatson」という呼び方でパートナー企業と共同開発したひな形が既に多数提供されています。このように、ERP+RPA/AIは、従来の業務処理を強化して新しいサービスする仕組みとして今後急速に広がっていくことが予想されます。このRPA/AIは、RPA(クラス2)の説明にある通り、EPA(Enhanced Process Automation、拡張プロセス自動処理)という非定形業務に対応したRPAの進化だと言えます。

 今回は、ERP+RPA/AIというRPAにAIで機能を強化するRPAの進化についてご紹介しました。これは、RPAがクラス2と呼ばれる世代に入ってきたことを意味します。自戒は、このRPA(クラス2)が実現するサービスがどのようにお客様サービスとして利用できるのかについてご紹介いたします。

◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第20回「ERP+RPAで出来るお客様サービスの強化」はいかがでしたでしょうか?このコラムを掲載いただいている日商エレクトロニクスでは、RPAの特設ページを作り、導入調査データも公開しています。興味がある方は以下のページもご覧ください。

RPA https://erp-jirei.jp/rpa_jirei

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このコラムを連載いただいている日商エレクトロニクスでは先駆者としてRPAの自社導入にも取り組んでおり、経営企画部、財務経理部、人事総務部の3部門でRPAをGRANDITE連携で導入し、ROI 590%と770万円のリターンを実現しています。そして成功事例の分析資料も以下のセミナーレポート内で公開しています。興味がある方は是非ダウンロードください。こちらにはガイドライン的なものも書かれています。

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