旧型ERPの課題を洗い出してERPを刷新する必要性

業界トップランナーである鍋野敬一郎氏のコラム「ERP再生計画」第二回「旧型ERPの課題を洗い出してERPを刷新する必要性」が公開されました。

はじめに

前回はERPの歴史についてふりかえってみました。今回は、最近囁かれている老朽化したERPの問題について考えたいと思います。

導入してから10年以上経ったERPシステムは、既にレガシーERPとしてさまざまな問題を引き起こしていると言われています。
そこにある問題とは、日本におけるERP導入の経緯や使い方に起因するもの、ビジネス環境が国内市場からグローバル市場へ展開するなど市場の変化に寄るもの、そしてAI人工知能やIoTといった新しいテクノロジーの登場などがその背景にあると思われます。

日本企業はERPをどのように導入して使っているのか

欧米でも日本でもERPは企業システムとして幅広く活用されています。
しかし、欧米企業と日本企業でERPシステムの使われ方が少し違っているのです。それは、日本企業の多くがERPシステムを会計機能中心に使っているのに対して、欧米企業では販売管理、購買管理、そして会計機能など複数の機能を利用するケースが多いことです。

また、一般的に日本企業はERPのアドオン(機能追加)やカスタマイズが多いと言われていますがこれは少し違います。欧米企業でもアドオンやカスタマイズは多くありますし、モディフィケーションと言われるプログラムのソースコードを改変することもあります。
その中身ですが、アドオン、カスタマイズいずれも画面や帳票などが多く、日本も欧米もERPパッケージに対するこうした改変は良くあることだと言えます。ポイントは、ERPシステムは海外から来た製品だったことと、会計機能中心に使う日本と会計を含む複数機能を使う欧米という違いにあります。

欧米と日本で業務のやり方が違うのは、読者の皆様も良くご存知の通りです。
会計処理では、”締め処理”という考え方が違う点といて良く指摘されます。日本では、月締めといって”月末締め”や”25日締め”などその月の請求処理の締め切りがあって締め日に間に合わない請求は、翌月に持ち越されます。
これに対して欧米では”締め処理”という考え方がなく、請求日から”90日以内に支払い” とか”30日以内に支払い”といった内容になっています。つまり、外資系ベンダのERPシステムを日本企業に導入する場合は、こうした商習慣の違いにきめ細かく対応する必要があります。
その結果、アドオンやカスタマイズといった改変作業が多数発生していました。その後外資系ベンダも日本の商習慣を理解して、機能対応をすすめたため最近のERPシステムではこうした改変をするのは少なくなっています。会計だけでもこうした違いが多数あり、購買や販売さらに業種別の商習慣の違いは多岐にわたります。

ということで、2000年代に入って国産ERPが登場したり、外資系ベンダが日本対応したバージョンを出したりするまでに導入した昔のERPシステムは、大小様々なアドオンやカスタマイズが施されていました。しかしながら、ERPシステムの「統合マスタ、統合データベース、自動集計」と言ったコンセプトは経営管理の仕組みとして優れていたためERPが低企業で幅広く普及しているのはご存知の通りです。

まとめると、日本企業では会計機能中心のERPシステム利用が多く、商習慣の違いによるアドオンやカスタマイズの割合が多いと考えられます。欧米企業では、会計だけではなく販売、購買など複数業務に幅広く使うケースが多く、導入コストや保守運用費用を抑えるためにアドオンやカスタマイズは極力やらないケースが多いのです。
しかし、操作性や生産性を少しでも良くしたいという考え方は日本と同じなので、画面や帳票などを追加開発するのは同じです。

レガシーERPが引き起こす問題点

ERPシステムを会計機能中心に利用するというのは、実はかなり贅沢な使い方です。販売管理や購買管理など他の業務処理にはわざわざ別のシステムを使って、ERPシステムと接続する必要があるからです。

全部ERPシステムでやれば、サーバの数も減るし接続する手間とコストも無くなります。こうしたこと以上に最近問題となっているのは、「会計メインのERP導入では、ガバナンス管理が十分ではない」とい問題です。

皆様お察しの通り、大企業における子会社や関連会社による不正会計処理の問題です。海外の子会社や関連会社などから、毎月会計報告を受けているにも関わらずガバナンスが効かず正しい決算発表ができないというケースが多数出ています。
これは、国内と海外で商習慣が異なり、さらに現場が隠蔽すると目が届かず長期間不正を見抜くことが出来ないというものです。

さらにレガシーERPの問題点として、「ビジネス環境の変化に対応できない、スピードが遅い”重厚長大”、”高コスト”、”ベンダ主導”」という柔軟性と費用対効果が低いことが深刻な問題になりつつあります。
市場の変化が急激なため、既存の仕組みがその変化のスピードに対応できなくなりつつあります。ERPシステムの改変には、それなりの準備が必要となり作業体制や費用が必要から対応が遅れがちです。これが事業活動の足枷となっているのです。

そして、ERP最大の問題点としてアナリストなどが指摘するのは「成長戦略に対応した即効性と拡張性が低く、IoT時代のSoRとSoEに対応していない」というものです。確かに、旧型ERPは、20年以上前の仕様で会計機能中心に使っています。従って、機能が乏しく費用対効果が低く、クラウドやIoT、AI人工知能などといったニューテクノロジーに対応した新規事業や成長戦略に対応するのは難しいでしょう。

つまりレガシーERPには以下の3つの問題点があります。

①「会計メインのERP導入では、ガバナンス管理が十分ではない」②「ビジネス環境の変化に対応できない、スピードが遅い「重厚長大」「高コスト」「ベンダ主導」、③「成長戦略に対応した即効性と拡張性が低く、IoT時代のSoRとSoEに対応していない」という3つです。
これは、ERPシステムが登場した頃の経営課題が現在とは違うことによるものです。
かつては部門間をまたがる全社統合がERP導入の目的だったのですが、最近は国内外に展開する企業グループ連携がERP導入の目的となっていることです。管理する対象が1つの企業内部署間から国内海外へ展開するグループ会社間へと複雑化しています。管理すべき対象と目的が大きく変わっているわけですから、古い仕組みのままでは対応しきれないのも当然だと言えるでしょう。

次回の内容

今回は旧型ERPがレガシーERPとなってしまった理由と、ビジネス環境が大きく変わった現状からレガシーERPを捨てるべき3つの理由をご説明しました。
次回は、次世代のERPに求められる要件についてその解決策についてご紹介いたします。

以上

このコラムについて

ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第2回:旧型ERPの課題を洗い出してERPを刷新する必要性はいかがでしたでしょうか?

このコラムでは10年以上前に作られたレガシーERPを捨てるべきと書かれていました。このコラムを読みながら10年以上前に鍋野氏とSAP社で同僚だったことを思い出し、あれからずいぶん経ったなぁと思います。あっという間に月日は流れていきますが、業務のやり方はずいぶん変わりましたよね。皆様の業務も進化または変化してませんか?10年前もしくは10年以上の前の業務のやり方はずいぶん変わってきているはずです。今、レガシーなERPを使用されている方はその業務の変化に対応させるべく、少しづつERPを改修してきているはずです。どのような素晴らしいシステムでも、改修を続けていけば、つぎはぎだらけのようなシステムになるはずです。

数年を超えるシステムは、捨てるほうも勇気がいります。できればいじりたくないのが本音ではないでしょうか。でも、コスト的には肥大化する一方ではないでしょうか?

そのようなお客様には月額料金のERPを検討してほしいです。月額料金のERPの魅力は何といっても初期料金が弾力化するところです。そしてリプレイスとなれば最新のERPで利用できるのです。このコラムが連載されている双日システムズでは、月額料金のERP「Sojitz-Sys商社ERP ver.1.0 by GRANDIT」と「Sojitz-Sys IT企業ERP ver.1.0 by GRANDIT」を提供しています。興味がある方は以下のページもご覧ください。現在、約10社の事例も公開しております。参考になると思います。

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