次世代ERPのニーズを洗い出すと5つの要件が見えてくる

業界トップランナーである鍋野敬一郎氏のコラム「ERP再生計画」第四回「次世代ERPのニーズを洗い出すと5つの要件が見えてくる」が公開されました。

はじめに

前回は、ERPを最大限活用する手段としてコアERPと事業用ERPを組合せて導入する「2階層ERP」という考え方で安定性と俊敏性を両立するやり方を説明しました。
また、ERPを補完するツールとしてRPA(ロボティクス・プロセス・アートメーション)をご紹介しました。
今回は、ERP導入を検討している企業のニーズを整理してみます。

なぜいまERPに取り組む企業が多いのか、破壊的イノベーションの到来

最近ERPシステムを再構築する企業が増えています。その理由として、デフレ経済から抜け出して企業業績が回復傾向にあること、国内市場が成熟したため海外展開が今後の成長戦略に必要であること、IoTやビッグデータ、AI/ロボットなど新しいテクノロジーに対する取り組みが競争力向上に不可欠となっていることなどです。
こうした理由から、事業戦略の見直しを迫られているのがその背景にあります。
今回は、こうした企業のERP再構築ニーズを少し掘り下げてみたいと思います。

自動車や機械など製造業では、業績が回復するとともに、ターゲット市場が国内から海外へと移っています。成熟する国内市場は、今後成長を見込むことが難しいのです。海外市場へ展開するために、ERPは適確に状況を把握して判断するための有効なツールとなります。
また、商社や卸売など流通業では、物流技術と通信技術が発展したことで商品の仕入先であるメーカーがユーザー企業と直接取引を行い、ユーザー企業が原材料や製品をもっと安く調達したいという理由でネットから価格情報を入手するようになり流通業の付加価値が下がりつつあります。商社・卸売の売上利益率は低下傾向に歯止めが掛からず、人件費の高騰や物流コストの上昇などがこれに追い打ちを掛けています。製造業も流通業も、市場構造が大きく変化していることがわかります。

さらに、モノを所有するのではなく必要なときだけ利用するビジネスモデルが登場して急激に成長しています。システム業界では、サーバとソフトウェアを自前で買い揃えるやり方(オンプレミス)から、必要なときだけ契約して利用するやり方(クラウド)が一般的になっています。自動車業界でも、車両を所有せずに配車と決済だけでタクシーサービスを実現してしまうUber(ウーバー)などや、ホテルに変わって自宅や寮などを民泊として簡単に貸し出す宿泊サービスを提供するAirBnB(エアビーアンドビー)などシェアリングエコノミーと呼ばれる新しいビジネスモデルが従来の産業構造を破壊しつつあります。(破壊的イノベーション)

このようにビジネス環境が激しい変化に直面していることから、企業はこれからの成長戦略に対応できる新しい事業とこれに対応するシステムを求めています。
大企業のみならず、中堅中小企業も同様に生き残りを掛け、チャンスを掴むために新しい仕組みを求めています。業界ごと企業規模ごとに目的やニーズは違いますが、市場の変化を機敏に察知して迅速に意思決定するための情報収集と情報活用を担うERPシステムは、その中心となります。
「今、何処で、何か幾らでどの位売れているのか?ユーザーは、どのような製品を欲しがっているのか?」など、必要な情報を必要なタイミングで入手する有力な手段のひとつがERPシステムだと気付いた企業は多いのです。かつてERPに求められたのは財務会計や管理会計などカネの情報でしたが、最近ではヒト、モノ、カネのみならずIoTなどの膨大なデータや、多様な取引に対応するビジネスモデルをコントロールしたいというニーズです。

最近のERP導入に求められる主な5つのニーズとは

ERP導入に求められるニーズを整理したいと思います。
最近の商談では、以下のようにERP導入は概ね5つの理由に集約されます。大抵のケースで、このいずれか1つか複数が該当します。
20年前と大きく違うのは、ERPは既に企業インフラとして当たり前の仕組みであるため、過剰な費用を投入したりせずコストパフォーマンス(費用対効果)をしっかりと考えた検討を行う企業が増えたことです。
また、ERPの選定にエンドユーザーや事業企画部門などが参画して主導するケースも増えています。

全社統合、グループ統合のインフラシステムとして(システムを揃えることでコストと運用を効率化)

これは、ERPに蓄積されているデータを活用したいというニーズによるものです。経営企画や経理部門など主に会計に関するデータ活用のニーズと、販売・購買・生産など業務管理に関するデータ活用ニーズの2つに別れますが、最近の傾向として後者の事業部門側からのニーズが高まっています。特に、BIツールが手軽に利用できるようになったため、ERPに蓄積されているデータを活かしたいとの要望が強くなっています。

ガバナンス強化の手段として(2階層ERP内部統制モデル)

これは、連結会計やガバナンスで子会社・孫会社、関連会社などに不明瞭な会計処理などが時折見られるケースが増えていることに起因します。特に、海外拠点やM&Aなどで買収した企業の財務情報などは、連結会計ベースの数字だけでは十分なガバナンスを効かせることが出来ないという問題がその背景にあります。製造業などでは海外からの売上比率が高くなっているため、今後もこのニーズが拡大すると予想されます。

他システム連携のコアシステムとして(ウェブ連携性、柔軟性、ハイブリッド型システム)

これは、ERPを中心としてBIやSCM、Webなど新しいシステムと連携するケースが増えていることによるものです。連携手段としては、過去はバッチ処理やファイル連携でしたが、現在ではWebAPIやEAI/ETLなどによる自動連携が常識となっています。2000年台に導入した旧型ERPや基幹システムでは、こうした連携に対応していないケースが多くそのような処理では変化に取り残される懸念があります。また、クラウドやオンプレミスを適材適所で使い分けるケースも増えているため、ハイブリッド対応をERP導入条件にあげる企業も増えています。

個別要件に使い分け、組み合わせて使えるシステムとして(業種特化型、疎結合逐次導入)

これは、ERPシステムをアドオン・カスタマイズすることなく、標準のまま導入したいという考え方が広がっていることによります。膨大な費用と手間を掛けて導入したシステムが、バージョンアップできずに、改廃せざるを得ないケースが外資系パッケージなどで顕在化したことから、ERPシステムはコストパフォーマンスに優れた製品を選択するという考え方が浸透してきています。国産ERPが品揃えを拡充したことでその選択肢が増えたという理由もあります。

短期と中長期で使い分けてコスト最適化できるシステムとして(国内と海外、即効性と柔軟性)

これは、製造業や流通業の海外展開やグループ展開のニーズが、クラウドERP導入や業種特化型ERP導入という選択につながっています。業種別テンプレートによる子会社、関連会社へのERP導入が広がっています。また、海外拠点に対しては、ガバナンスなどの理由から現地の情報を即時に入手したい、現地にIT要員を送ることが出来ないなどの理由で機能特化型ERPやクラウドERPを採用するケースが増えています。こうした状況を踏まえて、海外拠点では欧米並に内製化比率を高めるユーザー企業(主に製造業)も増えてきています。

次回の内容

今回は次世代ERPに対するニーズを5つのテーマで洗い出してみました。企業によって、ERP導入に対して期待する内容はそれぞれ違いますが、ビジネスに役立つ即効性の高い仕組みを使いたいという狙いは同じです。さて、次回は次世代ERPを支えるIT基盤について、考察してみたいと思います。

以上

このコラムについて

ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏によるコラム第4回「次世代ERPのニーズを洗い出すと5つの要件が見えてくる」を読まれていかがでしたでしょうか?

日本の多くの企業が初めてERPを導入した時と比べると、ERPに求められる要件は高度になっており、接続するシステムは多種になってきています。その上で、ERPに求められる要件の変遷も速くなりました。一言で言えば、変化に柔軟に対応できるERPが必要とのことですが、皆様が利用されているERPはいかがでしょうか?

思い返せば10年以上前にSAP JAPANに勤務していた時、R/3の導入企業の大半はR/3のビジネスモデルに合わせることを選択せずに大量のアドオンプログラムを開発し、導入されていました。それにより現状のビジネスモデルに合ったカスタマイズされたR/3が導入されて行きました。結果的に柔軟性に欠き、メンテナンス費用も大きく膨らんだ企業が多かったのではないでしょうか。

GRANDITベースのSojitzSys商社ERP、SojitzSysIT会社ERPは国産のERPがベースとなり、それぞれの業種に特化したカスタマイズをした柔軟性も考慮されたERPになります。ご導入いただいた皆様には将来必要となる柔軟性や生産性に満足いただけるERPになっています。今後、ERPを検討される皆様は是非以下のURLに記載されているSojitzSys商社ERP、SojitzSysIT企業ERPを是非ご覧頂きたく、宜しくお願いいたします。

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