ERP+RPAの投資対効果(ROI)を他社の2倍にする方法

業界トップランナー鍋野敬一郎氏のコラム「ERP+RPAの投資対効果(ROI)を他社の2倍にする方法(アフターコロナを見据えた働き方改革への処方箋)」が公開されました。

□はじめに

 新型コロナウイルスによる影響は未だ続いていますが、秋から各ベンダがこぞってオンラインセミナー(あるいはリアル+オンラインのハイブリッドセミナー)を開催しています。筆者も、複数のベンダのオンラインセミナーへ登壇させて頂く機会を頂きました。そのアンケート結果を見ると、ユーザー企業のERPシステム投資に対する反応は大きく2つに分かれるようです。1つは、ERP再構築プロジェクトを仕切り直して2021年度からスタートするケース。もう1つは、実施時期を定めることが出来ずに先送り。想定しているタイミングは、2025年問題を考慮してその直前の2024年度以降で検討する?というのが2021年度実施の次に多かった回答です。また、ERPリニューアルプロジェクトと、DXプロジェクトのどちらを優先するのかについて伺うと、多くの企業はDXプロジェクトが先と答えていました。しかし、DXプロジェクトの内容はまだ明確に決まっているわけではなく、PoCに着手するというものが大半です。PoCから横展開を経て全社で推進するというケースはまだ1割もありません。多くの企業は、まだ新型コロナウイルスの影響に翻弄されて基幹システムに関するロードマップを描けていないようです。しかし、既にその先を予測して先行しようと動き出している企業もあります。今回はそのケースを少しご紹介します。

■ERP+RPAによる投資対効果ROIのターゲットを担当者より管理者にするべき理由

 2025年問題対応を2020年度から取り組む予定にしていた企業は、その大半が2021年度からERP再構築プロジェクトを行なう計画を立てています。そのテーマの1つが、新型コロナウイルスによる影響を踏まえた「働き方改革」への対応です。具体的には、リモートワーク対応やRPA導入による煩雑な繰り返し業務(ルーチン)の自動化が成果を上げています。ERP+RPA導入によって、経理の月次処理や、購買における製品受入とその請求書を突き合わせるような伝票照合業務などです。こうした業務は、ERP+RPAによる成果を上げやすく業種や企業の規模に関係なく導入効果が期待できます。バックオフィス系では、経理業務、請求業務、購買業務などでERP+RPAが着実に実績を上げています。こうした動きを踏まえて、工場や研究所などへ適用業務を拡大しようという動きがあります。成功するケースも多いのですが、工場や研究所ではあまり上手く導入出来ないケースも報告されています。

バックオフィス系でRPA導入する業務は、ERPに加えてワークフローやEDIなどが既に導入されていることが多く、これを補完するかたちでExcelやウェブを組み合わせて参照/入力など処理するような煩雑な作業をRPA導入の対象としています。こうした作業は、定期的に繰り返し行なう業務なのでERP+RPAによる処理の自動化による効果が確実に出ます。何百時間、何千時間の作業の自動化は、残業時間の削減や働き方改革に効きます。このイメージで工場へRPAを展開した場合、上手く行かないケースが一気に増えます。その理由は業務プロセス標準化と生産管理システム(ERPやMESなど)のシステム化率に理由があります。失敗するケースで一番多い理由は、ERPなどの生産管理システムでは、月次などの大きいサイズの生産計画や製造指図はあっても現場レベルの週次、日次の生産計画や製造指図が別システムやExcel(紙など)で管理されていることによります。ぶっちゃけ日本企業では大企業も中堅中小企業もExcelやアクセスがその大半を占めています。ERPなど生産管理システムがちゃんと導入されているケースは少なく、計画作成作業が属人的で煩雑です。また、生産実績についても、MES(製造実行システム)が導入されているケースはさらに少なく生産実績をERPや生産管理システムへ入力するのもExcelや紙から数字を担当者が手で集めて集計するような場合が多く見られます。つまり、RPAを導入してもシステム化されている領域が少なく自動処理できる部分がわずかなので効果が出ないのです。さらに、一連の業務プロセスそのものが属人化しているため担当者ごとに作業が微妙に違っていて、RPA導入に時間と手間が掛かることが多く、ROI(導入コストに対するRPAによる省力メリット)が少ないのです。オペレーションミスによる誤入力やエラーも多く、繁忙期には入力作業が後回しになり、データが更新されないなどRPA導入以前の状況です。

 工場でRPA導入が上手く行かない理由(とその対策例)を整理すると、

  1. ERPやMESなどシステム化がされていない(Excel対応、システム化率が低い)
    →対策例:生産管理システム化する範囲を広げる
  2. 担当者ごとに業務プロセスが微妙に違う(属人的で標準化が出来ていない)
    →対策例:業務プロセスの見直し(手順書作成)、業務フローを決める
  3. 実績入力を人手に頼るためタイムリーにデータが取得できない
    →対策案:入力作業は自動化する見直しを行う(データを自動取得する仕組み)

 以上のようなケースが、RPA導入効果が出せない原因として多いようです。更に、導入効果を担当者レベルの作業時間から試算した人件費(作業時間x時間工数単価)で試算するため、バックオフィス系業務と比較して単金が安いため効果が出せないようです。(バックオフィス系の業務に携わるホワイトカラーと同じレベルの給料を貰っているのは、正社員の管理職だけ)導入効果を高めるアプローチとして、RPA導入対象業務を実績入力ではなく、管理者の計画作成の支援や自動化にして成功しているケースがあります。(時間工数単価が高く、代替出来る人が少ないため自動化/半自動化の効果が高い)工場の生産計画作成業務は、オーダーや状況に合わせて微妙に判断が必要となるため管理職が作成しています。コストと納期のバランスを調整して、良品生産の生産性を高める計画作成を管理者が行います。この業務は、作業負荷が高く人件費換算でボリュームが大きいの業務なので、作業時間を減らせれば費用対効果が上がります。管理者の業務をRPAの対象とする理由は、生産計画作成もERPや生産管理システムからのデータが必要となるため、①のシステム化率の高い領域から選ぶことが出来ます。②の属人化については、計画作成業務の標準化を行えばRPA導入効果を高めることが出来ます。計画作成に必要となるデータを洗い出して、これを一元管理するようにすれば、③の取得したデータで生産計画を半自動で作成出来ます。管理者の判断が必要な部分のみ追記するような作業となります。バックオフィス系業務とは違ったアプローチを試みることで、ERP(またはMESなど)+RPA導入による効果を狙うことが出来るでしょう。こう経験より筆者としては、工場などのRPA導入はERP(MES)+RPAによるROI最大化を考えて担当者より管理者を対象とした業務が狙いどころだと考えます。

■ERP+RPAの導入効果を高めて他社より2倍以上の効果を狙うポイント

 ERP+RPAの導入効果を高めるポイントは、ROIが最も高くなるような導入を考えることです。RPA導入ベンダの多くが、削減した時間をROIの評価指標としているようですが、ERPなど基幹系システムとの連携による期待効果を考える場合には、削減時間に追加して浮いた人件費(作業時間x時間工数単価)もバリューとして考えたほうが良いでしょう。そうすると、削減時間が同じならば当然のことながら管理者の方が2倍以上のバリューがあると考えられます。管理者の作業負荷を減らせれば、空いた管理者のリソースを他の業務にも振り分けることが出来ます。管理者の浮いた時間を、計画作成やトラブル対応に振り分けられるので残業も減らせるのではないでしょうか。また、管理者の業務負荷を減らせるので、次のステップとして現場担当者の省力化/省人化による働き方改革を目指すことも出来ると思います。工場の業務は、バックオフィス系業務とはポイントが違うことに留意すべきだと思います。

 さらに他社より更にRPA導入効果を高めるためには、やはり業務プロセスの見直しが有効だと思います。工場における取り組み手順としては、まずERPからのオーダー(生産指示)から製品出荷に至る全ての製造工程と関連する作業を洗い出して、見える化するところからはじめます。生産活動を見える化して、見える化に必要となるデータを工場で一元管理(データ統合)するOT Data Lake(OTデータレイク)を構築します。その次に、工場にあるExcelやアクセスなどの情報を集めてナンバリングして共有サーバで文書管理します。(バージョン管理して上書きされず、共有できるようにします)これで、工場にあるほぼ全ての情報を網羅することが出来ます。ここから、業務プロセスの見直しと生産活動に必要となるシステム(MESや在庫管理、品質管理など)やExcelファイルの見直しを少しずつ進めて行けばいいのです。できるだけシステム活用度を高めて、手作業による入力やオペレーションをRPA導入で置き換えていきます。こうすることで、着実にERP(MES)+RPAの導入効果を高めていくことが可能となります。はじめはベンダに導入を依頼しますが、最終的には内製化して工場のなかで対処出来るようにしましょう。大規模な改修や新しい取り組みのみベンダを使う方がお得です。これを続けていけば単なるツールとしてRPAを導入する2倍以上の効果を狙うことが可能となります。一過性のブームとしてのRPA導入ではなく、カイゼンや成長戦略につながるソリューションといて取り組むことも出来ると思います。まだしばらく新型コロナウイルスとの戦いは続きますが、こうした状況に負けることなく前に進み続ける取り組みが狙うべきルートだと思います。

※導入経験が豊富な日商エレクトロニクスが提供するERP+RPA及び付帯サービスについては以下のページで紹介しています。興味がある方は以下のページもご覧ください。
https://erp-jirei.jp/rpa_jirei

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日商エレクトロニクスのERPソリューション「GRANDIT」(商社向け/IT会社向け)
https://erp-jirei.jp/grandit

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https://erp-jirei.jp/archives/category/seminar/handson

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