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鍋野敬一郎氏「ERP再生計画」第24回:クラウドERPで実現する経営スピードと変化対応力の加速

□はじめに

 クラウドファーストという言葉も今では当たり前になりました。いまどきクラウドやオンラインストレージがセキュリティ弱いなどと言う情報システムはごく少数のスキルと知識の無いIT部門を持つ企業くらい(意外とゼネコンITベンダが多い)ですが、クラウドERPが急速に普及している現状を見ていると近い将来オンプレミスのERPシステムが少数派になるのは確実です。急速にクラウドERPがここ最近急拡大している理由の1つに、ERPコンサルタントが絶対的に不足しているという理由があります。また、DXやIoT、AIなどシステム化があらゆる領域に必要となるため、ERPやSCMなどエンタープライズ系システムの技術者が足りない状況です。今後も、システム技術者が足りない状況は改善しないと思われます。つまり、限られたシステム技術者で状況を打開する必要があります。これは、基幹システムを刷新するユーザー企業がシステム導入をベンダに依頼したくても必要な技術者が確保できない状況になると老朽化したままのシステムを使い続けなければなりません。実は、SAPでは既にこれに近い状況になりつつあります。老朽化した基幹システムを塩漬けにするのか、莫大な費用を投じても技術者を集めて基幹システムを再構築するのか、あるいは第三の選択肢を考えるのか。クラウドERPは、この第三の選択肢を考える取り組みにもつながります。DXやIoT、AIへの投資は企業の競争力に直結しますから、最優先で取り組むべきテーマです。しかし、ERPもこれに次いで重要なシステムですから、技術者が居ないからと言って簡単に塩漬けするという選択はあり得ないと思います。クラウドERPに対する取り組み方が、企業によっては突破口になり得るのではないかと思います。

図表1、 日本におけるポストモダンERPのハイプサイクル
図表2、“ポストモダンERP”のテーマ

■“リフト・アンド・シフト”でクラウドERPを使いこなすノウハウを獲得する

 クラウド名刺管理、オンラインストレージ、Office365やG Suiteなどオフィスツール、SlackやMS Teamなどのコラボツール、SkypeやZoomなどのビデオ会議システムというのはIT系企業じゃなくても普通に使われている時代です。当然、ID管理やセキュリティ対策も日々進化しているのですが、基幹システムが老朽化している企業は結構多かったりします。しかし、経済産業省が「DXレポート」で“2025年の崖”と警鐘をならす現状を考えると“うちは特に問題ないから何もやりません”という条項ではないようです。

 少し前までは景気も厳しかったので、ITベンダに声を掛ければ良い人材を揃えて提案してくれましたが、現在は空前の人手不足です。さらに、働き方改革という労働時間や職場環境の見直しを進めているためタダ働きや残業などあり得ません。企業業績は好調ですが、米中貿易戦争などが景気後退の引き金を引く懸念などもあり今後の見通しは不透明です。激しく変化するビジネス環境を生き抜くためにも、市場変化を察知して機敏に動くための仕組みが必要不可欠です。これが、“DXレポート”に掛かれている基幹システムを刷新すべき理由です。しかし、IT技術者は不足していて特にERPコンサルタントは最もリソースが足りていない領域です。新しく技術者を育成するとしても、通常は1~3年以上の時間と経験が無いと一人前にはなれません。つまり、昔ながらの重厚長大なERPプロジェクトを実行するのは不可能に近いでしょう。

ここで見極めが必要となります。既存基幹システムの棚卸しを行って、刷新すべき領域を洗い出し優先順位を付ける必要があります。また、大規模なプロジェクトを行うためには、準備が必要となります。最大のボトルネックは、社内の導入体制と社外のベンダ技術者の確保となります。たとえ優先度が高くても社内外の体制が整わなければ実行することは出来ません。つまり、出来るだけプロジェクトの範囲を絞り込んで少ないリソースでも実行できるようにする算段が必要です。ポイントは、既存基幹システム(レガシーERP)の棚卸しとシステムを更新する範囲の絞りこみです。やみくもに外部コンサルなど入れても、これは解決しません。この取り組みは、IT部門と経営企画部門を中心で行います。不安であれば、ごく少数の外部コンサルタントをサポートに使っても良いと思います。取り組むのは、既存基幹システムをクラウド環境へ移行するプロジェクトです。

ご存知の通りオンプレミスのシステムは、その大半をクラウド環境へ移行することが可能になっています。既存の基幹システムをクラウドへ移行するだけなら業務内容の見直しはほとんど必要ありません。つまり、IT部門主導で行うことが可能です。莫大な投資も必要ありませんし、移行期間もどれほど長くかかっても1年間を超えることはありません。オンプレミスからクラウドへ移行する狙いは、コスト削減とシステムの保守運用作業負荷の低減にあります。クラウドであれば、その費用対効果を簡単に試算することが可能です。既存の基幹システムをクラウドへ移行(リフト)してから、刷新すべきシステムや機能をクラウド上でリニューアルします(シフト)。経営企画の役割は、このリニューアルすべきシステムや機能の洗い出しと優先順位の判断にあります。

図表3、クラウドERPで実現する経営スピードと変化対応力の加速

■基幹システムの“リフト”と“シフト”の境界線を見極める

 “リフト・アンド・シフト”の狙いは、既存基幹システム(オンプレミスのERP)をIaaS型クラウドERPに移行してから、本格的にバラして少しずつリニューアルしていくという考え方です。基幹システムと言っても、たった1つのサーバで全て稼働しているシステムなどほとんどありません。実際には複雑に絡み合った複数のシステムが、巨大な基幹システムとして稼働しています。これを整理する手段としてクラウドを利用するのです。これは、基幹システムをこれまで導入したことが無い若手技術者や中途入社した技術者の育成の場となります。本当の狙いは、既存システムから新しい基幹システム構築の経験と知識を取得してもらうことにあります。いきなり、クラウド環境で新しいERPを導入するのはハードルが高すぎるのです。クラウド移行とERPリニューアルを、2STEPにすることでハードルを下げてリスクを減らします。経営企画部門も同様です。DXやIoT、AIなどによって従来のビジネスモデルでは厳しくなっています。目先の新しいテクノロジーに目を奪われるのではなく、「変えた方が良いところと、変えない方が良いところ」を見極める目利き力を養うのがこの“リフト”プロジェクトの狙いとなります。これと並行して、経営者や事業部門と未来のあるべき基幹システムの姿を描いて、来るべき“シフト”プロジェクトに臨みます。少ないリソースを使って、育成しながら逐次システムを入れ替える戦略こそ、クラウドERPを生かす攻めのIT投資ではないかと思います。生き残るために必要なスピードと変化対応力を得るためにクラウドERPを利用するのです。


◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第24回「クラウドERPで実現する経営スピードと変化対応力の加速」はいかがでしたでしょうか?相変わらずの鋭い視点の、分かりやすい解説が素晴らしかったです。素早い経営判断が企業に求められるのは当たり前です。ありがちな話として業務の判断は速いのに、ITに関すると判断スピードが遅くなるお客様も多いです。現場優先主義とでもいうのでしょうか。しかし、今の時代ITは業務基盤です。一日も早く改善したほうが一日も早く効果が出るのです。是非、鍋野氏のコラムを参考に頂き、クラウドERPへの移行をご検討ください。また、また実績豊富な日商エレクトロニクスのコンサルタントにもご相談ください。良い提案ができると思います。

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このコラムを連載いただいている日商エレクトロニクスでは先駆者としてRPAの自社導入にも取り組んでおり、経営企画部、財務経理部、人事総務部の3部門でRPAをGRANDITE連携で導入し、ROI 590%と770万円のリターンを実現しています。そして成功事例の分析資料も以下のセミナーレポート内で公開しています。興味がある方は是非ダウンロードください。こちらにはガイドライン的なものも書かれています。

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