ERPにこれまでの継続性とこれからの未来志向のデータ活用をイメージする

業界トップランナー鍋野敬一郎氏コラム「ERP再生計画」第55回「国家百年の計から企業の基幹システムの計を企てる。継続性と未来志向をERPに織り込む(その4)~戦略編2:ERPにこれまでの継続性とこれからの未来志向のデータ活用をイメージする~」をご紹介します。

□はじめに

 DXへの取り組みにおいて、ERPの有無がその成功を大きく左右する要素の1つであることだと考える企業が増えているようです。DXと言っても、その目的や内容によってさまざまな取り組みがあるのですが、ERPが成功の重要要素となるテーマの1つとして、データ活用による「データ駆動型経営」のベースとなる統合データ基盤構築の中心システムとして、ERPシステムの存在があります。これは、ERPの各種マスタや構成などが整えられていることがそのまま統合データベースの軸となることによるものです。つまり、DXに取り組むタイミングで、ERPのマスタや構成をそのまま利用すれば、ERPを中心とした巨大な統合データベースを比較的簡単に構築することが出来ることになります。データ活用のデータも、既にERPシステムに蓄積されているため、これを生かした経営ダッシュボード、現場ダッシュボードを素早く構築することが可能です。さらに、これを参考にして、他システムとのデータ連携を行うことで、データ活用のイメージを分かりやすく展開・再利用することができます。今回は、こうしたケースを参考としたERPシステムの「継続と発展」にフォーカスしたいと思います。

■データ活用による「データ駆動型経営」を考慮したERP企画とは

 従来のERPは、どちらかと言えば会計や人事など限られた領域のみを対象とした機能にフォーカスしたERP導入でした。“財務会計から管理会計”へ、“人事台帳管理からスキル管理・人材育成”、“受注伝票の集計から販売プロセス全体を網羅した販売管理”など過去からの継続を重視したERP導入がメインでした。2005年頃から2015年頃にERPシステムを導入した企業の大半は、こうした管理会計やスキル管理・人材管理、販売管理などの機能にフォーカスしたものでした。これは、各業務の属人化を排除して標準化による業務プロセスの見直しにも有効であり、個別案件の詳細情報を見ることでその進捗やフォローが可能となりました。しかし、ここ最近はDXを睨んだERP再生・刷新といった発展・成長戦略を強く意識した取り組みがメインへと移りつつあります。その目的は、データ活用による企業の成長戦略につながる新しい基幹システムを志向しています。世界的な景気後退の懸念や、ロシアによるウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱、そしてインフレによる景気への影響、さらにカーボンニュートラルへの対応など、企業経営で取り組むべきテーマが急増しています。

こうした様々な要件への対応は、ERPシステムだけでは対応できないことから、ERPシステムと他システムのデータを連携して対処出来ます。例えば、カーボンニュートラルは企業のCO2排出量を算定してこれを見える化、削減する必要がありますが製造業では、工場ごと、製品ごとのCO2排出量を算定する必要があります。ガソリンや灯油などの化石燃料や、電力の使用量などから算定することになりますが、その算定に必要な情報の多くはERPシステムの購買管理や在庫管理などのデータから取得できます。しかし、その使用状況や生産するのに使用した設備の稼働データなども必要となるため、MES(製造実行システム)など工場データも必要となります。サステナビリティや環境に関する取り組みは、経営テーマとして重要度が高まっているため適正かつ正確に収集して開示する必要があります。カーボンニュートラルの場合には、ERPで足りないデータをMESで補完して算定することになります。

(図表1、ERPを中心としたシステムの組織・マスタ基本構造サンプル(参考))

(図表2、ERPとMESのデータ連携でCO2排出量を算定する仕組みのイメージ)

■ERP再生は継続性と未来志向を織り込んだ新しいデータ活用がポイント

 これまで、ERPシステム再構築プロジェクトは、既存業務をベースに導入範囲や機能要件を中期事業計画や各事業が目指すゴールを前提とした計画策定が行われてきました。その内容は、どちらかと言えば継続性と安定性を重視した内容です。しかし、2020年以降の新型コロナウイルスや2022年のロシアのウクライナ侵攻といった想定外の事案が生じたことで、こうした考え方や計画が根底から覆される状況となっています。さらに、CO2など環境効果ガス排出による地球温暖化、これによる気候変動の災害が事業活動にも影響を及ぼしています。前述した通り、2050年カーボンニュートラル達成は地球温暖化を止めるために必要であり、企業はその取り組みを速やかに実行する必要があります。ERPシステムの再構築にも、こうした対応が求められています。これまでの業務要件や継続性よりも、この先に生じる事態を想定した未来志向の発想がERPシステムに求められることになります。

 ERPシステムはバックオフィス業務の機能連携が強みと言われ、その具体的な効果はコスト削減や効率化にあるというのがこれまでの認識でしたが、これからはERPを中心とした企業データの統合データベースとして未来予測やデータ連携によるサービス事業拡大という新しい役割が追加されることとなります。これは、ERPデータに他システムのデータを追加する“ERP+ONE”というイメージで、過去データが示唆する「気づき」や経験にもとづいた「予測」を察知するデータ活用です。データ駆動型経営というのは、こうした多様なデータを裏付けとした確度の高い未来志向のデータ活用の仕組みとも言えます。そのポイントは、データ活用を重点とした次の3点となります。

ポイント1、ERPを中心として他システムのデータを連携する

ポイント2、統合データベース上でERP+ONEのデータを一元化する

ポイント3、経営ダッシュボード、現場ダッシュボードなど誰でもデータ活用できる仕組みを作り全社員がセルフサービスでデータ活用出来ることを目指す

今回は、ERP再生の計画策定において継続性と未来志向を織り込んだERPシステムのイメージについてご紹介しました。こうした取り組みは、既に多くの企業で取り組みが始まっています。ERPシステムを複数業務の機能システムとして利用するだけではなく、これにつながる他システムとのデータ連携の中心としているところが新しいところです。クラウドが普及したことで、全社データを一元管理することが容易となり、全社員が誰でもそのデータを活用することで業務のスピードと効率化が進みます。

(図表3、ERPはバックオフィスの機能連携から統合データによるオープンなデータ活用へ)

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