業界トップランナー鍋野敬一郎氏のコラム第42回:流通DXの勝ち抜きポイントをテーマ別に考察する ~人手不足、物流業界再編、サービス化、カーボンニュートラルを考察する~

目次

□はじめに

 流通DXをテーマにした話を引き続き続けたいと思います。商社・卸売業、そして小売業それぞれが短期、中長期に取り組むべき3つの課題は、「成長戦略」「収益力強化」「コスト削減」だという話を前回しました。今回はもう少し具体的なテーマをあげて、そのテーマごとに課題とその解決策についてご紹介して行きたいと思います。岸田首相率いる新しい内閣が始動しましたが、新型コロナウイルスの次の波に対する備えと疲弊している経済の立て直しが早急に求められます。経済対策の課題は、雇用維持と人手不足が最優先ですが需要拡大、物流改革、カーボンニュートラル対応など流通業界にも重要なテーマが目白押しです。同様に、流通DXの対策は経営陣の関与が重要なのですが、日本企業は米国企業に比べると関与度が低いようです。先行きが不透明な状況ですが、経営者も腹をくくって未来を見据えた迅速かつ機敏な行動を心がけて欲しいと切に願っています。

(図表1、DXに対する経営陣の関与、日米比較)
(図表2、国内中堅・中小企業におけるDX導入動向)

■流通DXはどこから手を付ければ良いのか?

 流通DXで取り組むべき3つの課題ですが、この中で最も難しく時間とリソース(ヒト・モノ・カネ)が必要なのは、言うまでもなく「成長戦略」つまり売上を上げることです。新型コロナウイルス、人手不足、少子高齢化、市場の成熟化など売上が上がらない理由は山程あります。新しい技術や画期的な商品を取り扱っても、昔のように爆発的に売れるケースは少なくなり、さらにその売上も一過性でロングテールになりにくくなっています。従って、「成長戦略」は5年先、10年先を考えて中長期戦略を立てる必要があります。次に難しいのが、「収益力強化」です。これは、ロングテールの売れ筋商品を中心に業務プロセスやシステムなどを見直して利益を着実に積み上げていく取り組みです。理想とするならば、サービスレベルが上がってオペレーションコストやリードタイムが短くなるような業務プロセスの刷新や自動化による効果を狙うものです。そして最も即効性があるのが、「コスト削減」です。「コスト削減」は、対象となる業務やポイントが明確なので事例などを参考にして速やかに取り組むことが出来ます。しかし、期待する効果はそれほど高いものではなく、ポイントが分かれば誰でも可能です。つまり、競争優位性を高めるのではなく弱点を底上げして継続的に取り組むことになります。このように紐解くと、「コスト削減」は従来のIT導入やカイゼン活動が有効な手段で、「収益力強化」は業務プロセスの見直しや自動化といった業務最適化+デジタル化のDX導入が有効な手段だと言えるでしょう。さらに、「成長戦略」は中長期的な戦略で他社より優位な品揃えやサービスを開発・提供すること(イノベーションとも言えます)となります。

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