業界トップランナーである鍋野敬一郎氏による「ERP再生計画」の第41回「アフターコロナを勝ち抜くために流通DXでゲームチェンジに挑む!商社・卸売業が生き残るために取り組むべき3つの課題とは」

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はじめに

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。

新型コロナウイルスによる経済活動への影響は、自動車業界や機械業界など、一部産業では売上高が回復・増加しているところもありますが、ワクチン接種の遅れや変異種デルタ株の拡大、医療体制の危機的状況、さらに首相交替による政権の混乱などにより依然国内経済回復を足踏みさせています。また、自動車業界や機械業界など製造業の回復は、欧米市場や中国市場によるものです。景気回復しつつある海外市場と、不透明感が拭えない国内市場で大きな差が出ています。前回のコラムでお伝えした通り、新型コロナウイルスによる影響は商社・卸売業にも大きなインパクトを与えています。国による潤沢な資金供給によって、表面的な企業倒産件数は減少していますが借入金は膨大に膨れ上がっています。さらに、この1年間で全ての原材料やエネルギーコスト、人件費などが1割以上値上りしています。今後さらなるコスト増加が、避けられないと予想されています。こうした状況を踏まえて、商社・卸売業においても短期的には新型コロナウイルスの影響が落ち着くことを見越した準備を進めるとともに、物流に伴うカーボンニュートラル対応や少子高齢化加速を踏まえた中長期的な構造改革を進める必要があります。商社・卸売業が取り組むべきDX(デジタルトランスフォーメーション)のテーマは短期・中長期でそれぞれ複数あります。いずれも難易度が高く、これまで先送りしてきた難題ばかりです。商社・卸売業における課題は3つ、「成長戦略」「収益力強化」「コスト削減」です。今回は、この3つの課題それぞれに対する突破口について、今後のトレンド予測を踏まえた商社・卸売業の対策を先行企業の取り組みを参考に考察したいと思います。

 東京商工リサーチが公開したアンケート調査結果(2021年8月24日)によると、新型コロナウイルス感染拡大による企業業績への影響は依然継続していて売上高など企業業績への影響が業種別で浮き彫りとなっているようです。全体では、2021年7月の売上高を2019年と比較して66.9%の企業で落ち込んでいるようです。そのなかでも、前年比売上高が半減した「売上半減率」の業種ワーストは、商社・卸売業の「各種商品卸売業(15.0%)」でした。次いで「宿泊業(14.5%)」、「学術研究、専門・技術サービス業(11.8%)」、「建設業(11.1%)」と続きます。新しい首相とその政権も、引き続き厳しい状況のなかで経済対策が求められることとなります。しかし、「鉄鋼業」「非鉄金属製造業」など製造系の売上高が増加したのに対して、「サービス業」や「小売業」など対面型サービスに依存する産業は依然厳しい状況が続いています。つまり、業種別で明暗が分かれる二極化が顕著になっています。さらに、毎年経済産業省が公表している「電子商取引に関する市場調査」の2020年度の実績を見ると、日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模全体では19.3兆円(前年19.4兆円)とほぼ横ばいですが、その内訳は物販系12.2兆円(前年10.5兆円)21.71%増、サービス系4.6兆(前年7.2兆円)36.05%減、デジタル系19.3兆円(前年19.4兆円)14.90%増となっています。サービス系で減少率が大きかったのは、「旅行サービス」「チケット販売」「飲食サービス」などで新型コロナウイルスの影響を直接受けた業界です。また、2020年度の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は、334.9兆円(前年353.0兆円)5.1%減に減少しています。こうした調査データより、業種別やその内容によって商取引の傾向が大きく変動していることが分かります。そして、今後もこの変化はさらに加速すると予想されます。

(図表1,新型コロナウイルス「影響が継続」が7割超、66.9%の企業が売上高落ち込む)
(図表2,新型コロナウイルスの影響が継続と収束、業種別で業績が二極化)
(図表3,電子商取引に関する市場調査の最新情報2020年度)

商社・卸売業の3つの課題に立ち向かうDXについて

 商社・流通業が、取り組まなければならない大きな課題は3つあります。

 それは、「成長戦略」「収益力強化」「コスト削減」です。このテーマはこれまでも主要課題でしたが、多くの企業では即効性の高い「コスト削減」への対応に終始していました。しかし、新型コロナウイルスの影響によって物流コスト・人件費・エネルギーコストがこの1年間で1割以上上昇していることより、「コスト削減」だけでは現状維持も難しい状況です。商品の値上げは失注リスクにつながるため判断が難しく、身を削って耐え忍んでいる商社・卸売業が大半です。流通DXの本丸は、「収益力強化」への取り組みにあると言えます。さらに、少子高齢化や働き方改革などによる労働人口の実質的な減少、海外需要拡大と国内需要減少など市場トレンドの変化より「成長戦略」を抜本的に見直すべきときを迎えています。食品業界など複数の業界で業界再編を主導している総合商社や、メーカーによる直販ビジネスへの参入、外資系企業やベンチャー企業など新興勢力の台頭といった様相が展開されています。自動車や工作機械、機械器具などは変化が激しく、これまでのやり方を踏襲するだけでは生き残れないと言われています。目先のデジタル化ではなく、業界再編やゲームチェンジを予測して柔軟かつ機敏にビジネスモデルを変化させることも考慮すべきでしょう。新型コロナウイルスが収束したあとも変わらないのは、顧客ファーストとデジタル化、クラウド化だと思われます。

この3つの課題を中心とした流通DXへの取り組み(参考例)は、次の通りとなります。

・短期的な取り組み        → 「コスト削減1」(見える化、費用対効果による選別)

                                            「コスト削減2」(具体的な施策、コスト削減指標導入)

「収益力強化1」(利益率アップ)

・中長期的な取り組み       → 「収益力強化2」(品揃え戦略、高収益/サービス)

                                            「成長戦略1」(製品戦略、市場開拓)

                                            「成長戦略2」(アライアンス戦略)

例えば、「コスト削減1」(見える化、費用対効果による選別)ですが、これは取り扱っている商品・商品カテゴリ/顧客別などを時系列で見える化して、コスト削減に対する意識を高める取り組みです。同じ商品、同じ顧客でも注文内容や在庫販売、メーカー直送などによってオペレーションコストや納期が変わります。あたりまえのことですが、タイミングによって納期とオペレーションコストが大きく変わるのですが、月単位や年単位になるとコストの変動が掴めなくなります。商社・卸売業では、同じ商品でも商流/物流/金流が異なれば粗利や納期が変わります。在庫があっても、注文する数量や配送手段によって料金も変わるのですが、付き合いが長いお客様には追加費用を請求しづらいことも多く1個単位や端数の注文を受け付けないケースや、配送も至急で個別配送を依頼すると別料金が必要となることもあります。最小限の数量で、できるだけ早い配送で欲しいという顧客ニーズは、裏を返せば商社・卸売業のコスト負担となるのです。こうした状況を踏まえて、注文ごとに商品/顧客/ボリューム/納期などでコストの見える化から取り組みます。大半のデータはERPにありますが、物流コストや人件費、販管費など情報を追加してからデータ分析を行う必要があります。つまり、会計だけERPを入れている場合だと、欲しいデータを収集するのに苦労することになります。あたりまえですが、販売管理の注文を起点とした、会計/在庫/購買/物流などデータを揃えるためにERPの導入範囲を見直すことが重要です。さらに、カーボンニュートラル対応では製品ごと、配送ごとにCO2排出量を把握する必要がありますから属性情報としてCO2排出量の項目も考えておくべきでしょう。

今回は、流通業界の構造変化の状況と商社・卸売業が直面している3つの課題についてご説明しました。どのようなビジネスモデルで生き残れるのか、誰にもわからない状況ですが変化に合わせて機敏に対応できなければ、大波に飲み込まれかねない状況です。状況把握の手段として、流通DXへの取り組みが必要となります。システム化のポイントは、商品マスタとその在庫をリアルタイムに把握できるERPやWMS(在庫管理システム)、商品の物流をコントロールできるSCM(サプライチェーン管理)とLES(物流管理)などです。さらに、そのデータを統合管理する流通データレイクやそのデータを活用したサービス(アプリケーション)の提供にあります。次回は、この内容をもう少し具体的にご紹介したいと思います。

(図表4、流通DXが取り組むべき3つの課題とあるべき姿に至るアプローチ)

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