クラウド化を見据えたERPの技術動向(GRANDIT 高橋昇氏の「レガシーERP」からの脱却第8回)

ビジネス環境が変化するスピードが格段に速まっている中で、ビジネスチャンスを逃すことなく自社の競争優位を確立するため、多くの企業では従業員の業務生産性を向上し、組織全体での競争力を高めるための取り組みを進めています。

その一つは、自社のシステム構築の方法を、従来の自社開発方式からパッケージ導入方式に切り替える動きです。財務会計、人事給与といった領域では8割以上がパッケージ導入方式になっており、販売管理やプロセス・組立加工などの生産管理といった領域でも、従来の3割程度から徐々にパッケージ導入が増加しており、次回更新時には50%の企業がパッケージ導入に切り替える方針です。

加えて、CRMやSFAなどのフロントオフィスの領域の動向は顕著です。フロントオフィス領域は従来のシステム導入率自体が低かったこと、利用対象者の多くが営業部門でオフィス、外出先など場所を選ばずに業務を行うこともあり、提供されている製品やサービスの多くがクラウドやSaaS型になっているので、サービス型での利用比率が最も高くなっています。

【業務領域別のシステム導入傾向】

・財務会計、人事給与などのバックオフィス領域は、業種・業態による違いが少なく、法改正対応の必要性が高いため、パッケージ導入率が高い

・販売管理、生産管理などの業務領域は、業種特性や自社独自の業務プロセスを重視する傾向から自社開発の比率が高く、現在のパッケージ利用率は25~35%に留まるが、次回更新時のパッケージ導入予定は50%程度と高い

・CRM・SFAなどのフロントオフィス領域は、システム導入率自体がまだ低いが、SaaS利用率は最も高い

■クラウド時代に求められる企業システム像

企業システム中にクラウドが徐々に浸透していくことで、企業システム像も変わっていくと考えられます。

従来、オンプレミス主体だった基幹システムを中心とした、企業の定形的な業務処理を支えてきたシステム領域「SoR(System of Record)」はオンプレミスに加えて、プライベートクラウドへの徐々に移っていきます。加えてビジネスニーズの変化に柔軟に対応し、新たに顧客やパートナー企業との接点を拡大する「SoE(System of Engagement)」はパブリッククラウドやSaaSを中心に利用が拡大。

このような流れは徐々に進んでいくため、当面は利用するシステムによってオンプレミス型、クラウド型を適材適所で使い分ける「ハイブリッド型」のシステム構成が主流になると思われます。

「SoR(System of Record)」と「SoE(System of Engagement)」では求められるシステム要件や開発方法、システム連携の考え方が異なりますが、企業システムとして一体となって動く必要があるので柔軟に連携可能なシステム基盤を構築することが求められます。

■クラウド化を見据えたERPの技術動向

このように、クラウド化によりERPに対する技術的な要求も変わりつつあり、ERPベンダーもこういった流れに積極的に対応していく必要があります。特にこれからのERPが対応すべき技術トレンドとその方向性をいくつかご紹介させて頂きます。

  • クラウドERP
    これからの企業システムはその目的や用途によって様々なITインフラを使い分けていることが重要になります。従来のオンプレミスだけではなく、IaaS型、SaaS型などのクラウド環境に柔軟に対応出来ることが必要です。
  • さらなる自動化への取り組み
    生産性向上への取り組みはこれからの企業において喫緊の課題といえます。従来型のERPは企業データの入力、集計、分析を主な自動化領域としていますが、さらなる生産性向上を実現するためには、その自動化範囲を基幹業務の前処理や後処理まで拡大する必要があります。加えて今後は人工知能の活用と自動化による省力化/省人化が期待されています。
  • IoTやサービス化への対応
    お客様のビジネスモデルの変革により、従来の業種・業態を超えた新たなビジネス形態への対応が求められています。特に設備保全、アフターサービスといった領域では、その情報収集の手段としてIoTの活用が期待されています。
  • 柔軟なシステム連携
    「所有から利用」といった、システム利用形態の変化に伴い、企業システムの一部を外部のクラウドサービスで機能補完するといった形が拡大しています。このようにオンプレミス、クラウドといった様々な環境をまたがったシステムを活用するためには、柔軟なシステム連携の方法が必要。WEB-APIを活用した外部システムやWebサービスとの連携が求められています。

高橋 昇 プロフィール
GRANDIT株式会社 マーケティング室 室長

1985年 総合商社系情報システム会社(現インフォコム株式会社)へ入社。商社向けシステム開発部門に所属し、繊維・化学品・食品関係などのシステム開発やC/S・WEBシステム、ミドルウェアなどのアーキテクチャー選定・導入を担当。2003年10月 インフォベック株式会社(現GRANDIT株式会社)にて、次世代ERPコンソーシアムによるERP「GRANDIT」の開発に立ち上げ当初より参画。パートナー営業・製品開発の責任者としてERPシステムの提案活動・導入支援に従事。2018年よりマーケティング室 室長として、営業・製品開発をあわせたマーケティング施策の企画立案とプロモーション全般の責任者を担当。 GRANDIT公式サイトはこちら

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