「クラウド時代に向けた企業システムの方向性」(GRANDIT 高橋昇氏の「レガシーERP」からの脱却第7回)

 ERPパッケージでは、従来からオンプレミス型によるソフトウェア導入が大半を占めていました。一方で、営業力強化のためのCRMやSFA、働き方改革の一貫として利用が拡大している、勤怠管理や交通費精算といったフロント系システムはクラウドでの利用が一般的になっています。

また、自社のITインフラとしてMicrosoft Azure、Amazon Web Services(AWS)をはじめとした、従量課金型のIaaS環境を選択する企業が増えていく中で、ERPパッケージでも、事業環境や利用環境の変化に柔軟に対応出来るライセンス提供を求める声が高まっています。

 今回からのコラムでは、クラウド化に向けた流れや最近関心が高まっているクラウドERP、そしてクラウド時代に向けた企業システムの取り組みや方向性などをご紹介したいと思います。

■クラウドとは?

 最近では新聞やメディアなどでも「クラウド」という言葉が掲載されるようになりましたので、ご存知の方も多いとは思いますが簡単にご紹介したいと思います。

クラウドはコンピュータやシステムを自身で所有するのではなく、事業者が用意したサービスを利用するモデルを示し、「クラウドシステム」と呼ばれたりもします。クラウドサービスを提供する事業者を「クラウド事業者」と呼び、コンピュータやシステムなどの設備を安心して利用できる状態で提供します。一般的に規模が大きい程廉価になるため、事業者はスケールメリットを追求するために大規模化を進めています。

加えて、クラウドにはセキュリティ面でも大きなメリットがあります。クラウド事業者は大規模な環境での厳しい要件を満たす最高レベルのセキュリティを維持するために投資を続けており、利用者は利用料を支払うことでこれらの恩恵を受けることができます。

(クラウドのイメージ)

事業者が設備を用意し、利用者は利用に合わせて安い費用でサービスを受けることができることから、公共サービスに例えられることが多いようです。(最近では、必ずしも公共サービスと呼べない部分もありますが…)

■クラウド動向

それでは、クラウド利用の動向はどのようになっているのでしょうか?
以下の表は、総務省が発表した「クラウドサービスの利用状況」ですが2013年以降、右肩上がりに増加しており、2017年時点では「全社的に利用している(29.4%)」、「一部の事業所又は部門で利用している(27.5%)」となっており、何らかの形でクラウドサービスを利用していると回答した企業の比率が50%を超える56.9%となりました。

(クラウドサービスの利用状況)

(出典)総務省「通信利用動向調査」より転載

また、クラウドサービスを利用する企業のうち、「非常に効果があった」、「ある程度効果があった」として、効果を実感している企業の割合は85.2%であり、多くの企業で効果を実感しているといえます。

(クラウドサービスの利用内訳)

(出典)総務省「通信利用動向調査」より転載

また、利用しているサービスの内訳で多いのが、「ファイル保管・データ共有」や「サーバー利用」「メールサービス」などをはじめとするインフラ系サービスです。業務アプリケーションとしては、インフラ系サービスに次ぐ形で「人事」「給与」「財務会計」といった、いわゆるバックエンド系とも呼ばれる基幹業務になります。これらは、企業毎の個別カスタマイズが少ない上に、毎年のように法改正が行われるため、パッケージやクラウドの採用が多い領域といえます。

一方、企業の競争力の源泉となる「販売」「購買」「生産管理」「物流管理」などの領域は現在でも自社開発を行っている企業も多く、パッケージが導入される場合でも、現状の業務モデルに合わせるために最もカスタマイズが入る領域であることから、クラウドサービスの利用率も低くなっているといえます。

従来、基幹業務の領域については、クラウド化が進みにくいと考えられていましたが、今後は、昨今の「IT人材不足」「働き方改革」「企業システムのデジタル化」なども相まって、基幹システムの領域でもクラウド化の動きがさらに加速するといわれています。

それでは、次回のコラムでは、基幹システムの領域でクラウド化が加速する背景やERPベンダーの動向などを中心にご紹介させて頂きたいと思いますので、どうぞご期待下さい。

高橋 昇 プロフィール
GRANDIT株式会社 マーケティング室 室長

1985年 総合商社系情報システム会社(現インフォコム株式会社)へ入社。商社向けシステム開発部門に所属し、繊維・化学品・食品関係などのシステム開発やC/S・WEBシステム、ミドルウェアなどのアーキテクチャー選定・導入を担当。2003年10月 インフォベック株式会社(現GRANDIT株式会社)にて、次世代ERPコンソーシアムによるERP「GRANDIT」の開発に立ち上げ当初より参画。パートナー営業・製品開発の責任者としてERPシステムの提案活動・導入支援に従事。2018年よりマーケティング室 室長として、営業・製品開発をあわせたマーケティング施策の企画立案とプロモーション全般の責任者を担当。 GRANDIT公式サイトはこちら

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