「OCR連携型RPAソリューションのご紹介」(GRANDIT 高橋昇氏の「レガシーERP」からの脱却第6回)

 前回のコラムの最後に、OCRとRPAツールを連携させた自動化シナリオについて、社内でプロトタイプ検証中とご紹介しました。一応、皆様にご紹介出来るレベルになったと思いますので、今回のコラムではこのプロトタイプを中心に紹介したいと思います。

■OCR連携型RPAソリューションの概要

 OCRとRPAを連携させる際、前回ご紹介したスキャン結果をCSVなどのファイルに書き出すタイプとAPIなどで直接連携するタイプがあるとご説明しました。製品の多くはOCR機能に特化しており、様々な既存システムと連携するのにファイル経由は都合が良いと思います。

一方でシームレスなシステム連携を行う場合はAPIによる連携が優れていますし、最近では、OCR製品の利用範囲を拡大するためにRPA製品に対して、OCRエンジンや接続コネクタを提供するベンダーも現れています。

今回の「RPA Solution for GRANDIT」でもRPAに組み込まれているABBYY社のOCRエンジンを活用することで、OCR読み取り結果を人間が補正しつつ、RPAによる自動入力を1ステップで行うといった処理が実現できています。

【ABBYYについて】

ABBYYは、世界16ヶ国に拠点を置き、コンテンツキャプチャ技術を提供するグローバル企業です。200カ国以上の国でABBYYの製品、技術、ソリューション、サービスが使用されており、多くの文書キャプチャベンダー、スキャナメーカー、MFPメーカーなどがABBYYの技術を採用しています。

そして近年ではUIPathやNICEなどのRPA製品にOCRエンジンやコネクタを提供するなどデジタル化に向けたソリューションとの連携を積極的に進めています。

■OCRスキャンからRPAによるERPへの自動登録の流れ

 今回、プロトタイプとして作成したロボット処理の主な流れは以下のとおりです。

  • RPAが特定のフォルダーに保管された注文書(PDFファイル)の内容を読み込み、ドキュメントの内容をスキャン、結果をEXCELファイルに出力します
  • EXCELファイルの内容にもとづいて、GRANDITの受注入力画面から注文書の内容を入力します。
  • 受注入力画面に入力する際に、注文書上に記載されていない項目(取引先コードなど)は、取引先名称からコードを検索して画面に入力します。
  • 受注入力画面のすべての項目の入力が完了した時点で内容の確認を促すメッセージと注文書(PDFファイル)を画面に表示。
  • オペレーターは入力内容を確認し、問題がなければ「更新」ボタンを押す、内容に間違えがあれば、GRANDIT受注入力画面上で内容を修正して「更新」ボタンを押す、確認が必要でその場で修正が難しい場合は「キャンセル」ボタンを押すといった選択をすることができます。

実は今回のプロトタイプは前回のコラムで記載したイメージ図の内容と動きが若干異なります。

(前回のイメージ図)

一点目は、前回のイメージ図では。RPAが表示する「RPAアシスト画面」でスキャン結果を確認することになっていました。もちろんこのような方式も実現できるのですが、入力内容のチェックは注文書(PDFファイル)をスキャンした結果の確認とERPへの入力時にエラーがないかどうかという二つのポイントがあり、後者のチェックはERPでしかできないので、内容確認もあわせてERP側の画面で実施することにしました。

二点目は、スキャン内容を一旦EXCELファイルに出力している点です。これも技術的にはスキャンした注文書の内容をそのままRPAでERPに登録することが可能ですが、一度中間ファイルとしてスキャン結果を出力することで、事後の確認がしやすくなるので処理を追加しています。

(最終盤:OCR・RPA・GRANDIT連携イメージ)

 こちらが、OCR機能を活用しRPAでGRANDITへの入力を自動化したイメージになります。画像でのご紹介で少し分かりにくいとは思いますがご容赦下さい。

 ロボットが起動されると特定のフォルダーを監視して、読み取り用のファイルがフォルダーに格納されると、OCR読み取りとGRANDITへの入力を実行します。入力が完了するとRPAが「データの入力が完了しました」というメッセージの入ったダイアログを表示しますので、担当者は画面に表示されているスキャン前のファイルとGRANDITの画面に入力された内容を確認し、問題がなければ「OK」ボタンを押すと、GRANDITにデータが登録されます。

今回、「アシスト機能」と「OCR機能」を持つRPAを利用することで、OCR読み取り結果の確認とERPへの入力結果の確認という、2ステッププロセスを1ステップで自動化することが出来るようになりました。

実際の業務では、処理する伝票の数やタイミングなどによって、1ステップで処理したほうが効率的な場合とそれぞれ別のステップで行った方が効率的な場合がありますので、自動化したい業務の特性になどよって有効と思われる自動化の方法を使い分けて下さい。

それでは、今回のコラムはこれで終了となります。次回からは最近はERPのような基幹システムの領域でもニーズが高まりつつある「クラウド」について、ご紹介させて頂きたいと思いますので、どうぞご期待下さい。

高橋 昇 プロフィール
GRANDIT株式会社 マーケティング室 室長

1985年 総合商社系情報システム会社(現インフォコム株式会社)へ入社。商社向けシステム開発部門に所属し、繊維・化学品・食品関係などのシステム開発やC/S・WEBシステム、ミドルウェアなどのアーキテクチャー選定・導入を担当。2003年10月 インフォベック株式会社(現GRANDIT株式会社)にて、次世代ERPコンソーシアムによるERP「GRANDIT」の開発に立ち上げ当初より参画。パートナー営業・製品開発の責任者としてERPシステムの提案活動・導入支援に従事。2018年よりマーケティング室 室長として、営業・製品開発をあわせたマーケティング施策の企画立案とプロモーション全般の責任者を担当。 GRANDIT公式サイトはこちら



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