トランプ関税の影響を機敏に回避できるERPシステムのレベルアップ要件とは

業界トップランナー鍋野敬一郎氏コラム第78回「トランプ関税の影響を機敏に回避できるERPシステムのレベルアップ要件とは~トランプ関税の影響(為替、物流、調達ルート)をERPアップグレードで回避する~」をご紹介します。

□はじめに

 トランプ大統領の第二次政権「トランプ2.0」は、大統領就任翌日から連日世界に大きな衝撃とニュースをまき散らしています。さすがに大国アメリカ大統領らしい、我が道を行くトランプ氏の影響力の大きさを感じる毎日です。さて、世界はトランプ2.0の嵐に翻弄されていますが、比較的影響を受けていないのが日本政府と石破政権です。石破首相も通常国会がはじまって、少数与党として年度内に予算成立を目指しているためトランプ2.0どころではないとも言えます。しかし、多くの日本企業は少なからず影響を受けることが確実です。トランプ大統領は、まずメキシコやコロンビアに対する不法移民対策を本格化しています。移民政策は、アメリカのみならず欧州なども同様に経済や治安、貿易、国家安全保障など幅広い領域に影響します。しかし、日本は島国のため不法入国が難しいため、不法移民にピンとこない人が多いと思います。特に不法移民問題は、経済格差と治安に大きな要因なのです。石破首相とトランプ大統領の初首脳会談は、2025年2月7日に予定されていますが、アメリカにとって日本は同盟国であり、どの国よりもアメリカに不利益となる問題が少ない国であるためフレンドリーな対話が期待されます。日系企業にとっては、日米関係が安定しているのは良いことです。しかし、ここで問題となるのは為替と日本に対する貿易(トランプ関税)でしょうか。米国市場は、トランプ大統領による一方的な関税政策による貿易の混乱が予想されます。強い需要を背景として、アメリカの国力は短期的には強くなると言われていますが、結果的にインフラや景気悪化を招く懸念があると予想されています。これまで日系企業は、円安による自動車や機械など製造業が自由貿易の恩恵を受けてきましたが、今後は日米の金利格差が狭まって円高傾向になる可能性があります。トランプ2.0だけではありませんが、世界的に不安定な経済状況が続くことは間違いないでしょう。ERPシステムに求められるこれからのニーズには、こうした変化への即応性とERPに蓄積されたデータを利用したAI分析による経済予測の精度の向上があります。予測不可能なトランプ2.0を生き残るために、変化に対してリアルタイムに対処できるERPシステムのアップグレードが必要不可欠だと考えられます。

■トランプ政権による関税政策は商社卸売業のビジネスチャンスとなる?

 商社卸売業における課題は、顧客が求める商品や商材をどれだけ安く仕入れることが出来るかと顧客が希望する納期に合わせた調達が出来るかという点です。国内の商社卸売業の大半は、国内外の貿易によるため為替レートの変動を回避することや物流のコントロールが大きなテーマとなります。複数の仕入先と調達ルート、サプライチェーンの状況に合わせた輸送手段の選択(トラック輸送、鉄道輸送、船舶輸送、航空機輸送など)、関税や環境規制など国家間の貿易ルール(自由貿易協定、二国間貿易協定、国家安全保障による輸出規制など)、決済通貨や決済方法による手数料など商社卸売業のビジネス環境は刻々と変化します。商社卸売業に求められるERPシステム要件は、こうした変化にきめ細かく対応することですが、これまではその判断が自由貿易協定などを背景とした簡易なオペレーション(誰が対応しても同じ)であり、独自の手法やノウハウが仕入先や調達ルート以外にあまり強みを生かせませんでした。しかし、トランプ大統領による関税を課す政策変更は、こうしたぬるま湯のような貿易管理を一変することが予想されます。自動車産業においては、米国市場へ製品や部品を輸出する場合、その製品や部品をNAFTA自由貿易協定によるゼロ関税制度があったメキシコやカナダで生産して、これを北米市場へ送ることで人件費やコストを最小限に抑えることが可能でした。トランプ政権は、2025年2月1日からこのゼロ関税を撤廃して一律25%の関税を課すとしています。これによって、メキシコやカナダに工場を置く自動車関連企業は大きく収益が減ることとなります。

図表1、トランプ関税による影響:自動車産業

(図表1、トランプ関税による影響:自動車産業)

 こうしたトランプ政権の関税政策に対してメキシコやカナダが同様に米国からの製品輸入に対して課税する対抗策を打ち出すことが予想されますが、世界最大の需要と好景気を背景とする米国市場に対する影響は限定的です。米国市場は代替製品をメキシコやカナダ以外の国から購入することが出来るので、どのような対抗策を打ち出してもメキシコやカナダが勝てる見込みは低いと思われます。結果として、トランプ政権との交渉で関税を下げてもらうか、米国との直接貿易をあきらめて第3国を介して米国市場へ製品を送るしか無くなります。日本の自動車関連企業にとっては、メキシコ工場で生産した製品を米国に輸出するよりも、日本で生産した製品をアメリカへ輸出するかあるいはメキシコで生産した製品を日本へ輸送して日本から米国へ輸出する方が利益を増やす可能性もあり得ます。つまり、トランプ政権による関税政策は商社卸売業の強みを生かせるチャンスにつながるかもしれません。そのためには、変化に即応できるERPシステムのチューンアップが有効です。

■ERPシステムをアップデートして変化に機敏に対応できる仕組みをつくる

 トランプ大統領による関税政策は、まずメキシコとカナダに対するゼロ関税のNAFTA自由貿易協定を25%へ引き上げることと、中国に対する追加関税10%です。(現状1万品目以上の製品に7.5%~100%の関税が課されている)100%の関税対象は、バイデン政権が中国製EV車に課したものですが、トランプ関税ではさらに10%が追加されて110%の関税となります。メキシコ、カナダは、アメリカに対して報復関税で対抗するとともに、中国はWTOへこれを提訴する構えです。トランプ関税は、2月4日から施行されるため市場の混乱は避けられないでしょう。こうした混乱が長期化する懸念もあり、その結果として景気後退やインフレ率上昇など世界経済への影響も懸念されています。

日本企業においては、前述した通り、メキシコやカナダで生産した製品をアメリカへ輸出する場合の影響が大きく、これは自動車産業や機械産業に大きな打撃となります。トランプ政権は、アメリカファーストを掲げて米国製造業の復権を掲げていることから、メキシコとカナダの生産拠点を米国内へ移転せざるを得ない可能性もあります。また、日系企業の中国工場で生産している製品に対しても関税が課せられます。こうした日系企業は、中国生産をアジア新興国やインドなどへ移管する動きか活発化しています。

図表2、トランプ関税による影響:対中国への追加関税10%

(図表2、トランプ関税による影響:対中国への追加関税10%)

 メキシコとカナダ、そして中国に対するトランプ関税は、日系の自動車産業や機械産業への対する大きな影響を与えます。しかし、これだけではありません。トランプ大統領が掲げる経済政策には、「中国以外からの輸入品に10~20%の一律関税を課す」というのもあります。つまり、トランプ関税の第二弾は日本に対してもゼロから10~20%の関税が課される可能性もあり得ます。さらに、日銀による政策金利引き上げが円高傾向を促していることから製造業の業績はさらに厳しくなる懸念があります。逆に、米国から日本への輸入については好転します。食糧やエネルギーの大半を海外からの輸入に頼っているため、こうしたメリットが期待できます。自由貿易経済を前提としたグローバル化から、分断と対立を生むブロック経済や交渉による市場経済は新しいビジネスチャンスにつながるケースもあります。いずれにしても、変化のスピードの機敏に対応できる組織体制とERPシステムを中心とした基幹システムのアップグレードを進める必要があるでしょう。

 今回は、トランプ関税をテーマとしてその影響が自動車や機械など日系企業に及ぼす影響についてお話しました。自動車産業や機械産業は、日本の基幹産業であることから日本経済に直接影響することが分かります。この変化を乗り切るためには、どのような状況においても変化スピードに機敏に対応できる組織と仕組みが必要です。また生産拠点を中国からアジア新興国やインドへ移管する動きも活発化しています。その要となるシステムがERPシステムであり、こうした変化を見越した対処が必要となります。

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