ERP+RPAは普及拡大フェーズへ、RPAは今後どの領域に加速するのか

鍋野敬一郎氏コラム「ERP再生計画」第35回「ERP+RPAは普及拡大フェーズへ、RPAは今後どの領域に加速するのか(導入しやすい業務と導入が難しい業務)」を公開しました。

□はじめに

 ERPとRPAを組み合わせた活用は、定期的に行うルーティンワークを自動化することで担当者の作業時間を省力化に効果が高いという話はここでも何度も行いました。また、RPAとAI-OCRの連携はさらに効果を高めることもご紹介しました。RPAの導入費用は安くなり、選択肢も広がりました。大企業から中堅中小企業や官公庁へ、RPAの導入は広がっています。こうした状況を踏まえて、RPAは本格的な普及期に入ったと思います。また、経済産業省が2018年に公開したDXレポートを踏まえて、多くの企業がDXへの取り組みを急いでいます。DXに取り組む目的は、競争力強化と激変するビジネス環境に対応して生き残ることです。DXへの取り組みを睨んで、これからのRPA戦略についてご紹介します。

■バックオフィス業務と工場や研究開発業務ではRPAの使い方やコツが少しだけ違う

 RPAの導入範囲は、バックオフィス系の業務から工場など生産現場や研究開発など幅広い領域へ拡大しています。ERP+RPAによる効果については、さまざまなノウハウや事例がモデル化されて安定した成果をあげています。経理財務の月次処理や、請求書の作成作業、調達業務における支払い処理など、お客様や仕入先によって契約条件や商流が異なるため同じ業務でも処理パターンは複数あります。こうしたパターンごとに整理して、ERP+RPAで自動処理する仕組みを作り、担当者の役割はその確認作業とすることで作業効率を高めることが出来るのです。ここで問題となるのは、作業担当者によって同じ業務なのに作業手順が異なったり、手順が曖昧で属人的なやり方が複数存在したりするケースです。手順を定めることで、こうした問題は解消することが出来ます。お客様や仕入先の都合で、通常とは異なる対応や、ミスなどによってこうした自動処理が滞るケースも生じますが、その場合には、担当者の判断で問題解消出来ます。ツールを上手く活用するポイントは、これまでの処理作業をそのまま自動処理にするのではなく、RPAによる自動処理を行った後で担当者が確認する処理を入れてミスやエラーを見つけやすする仕組みを組み込むことです。また、同じ処理をした前回や前々回と比較することでミスやエラーを気づきやすくすることも出来ます。

 このようにRPAツールの導入効果は着実に高まっていることから、その対象領域を広げています。しかし、経理業務や調達業務は処理プロセスが手順化されているところが多いのに比べて、工場の生産業務や研究開発業務はより属人的で暗黙知の範囲が多いと言えます。例えば、工場の生産業務では多くの管理帳票(紙やExcel)が使われていますが、システム化されている業務は少なく、担当者ごとに微妙に手順や段取りが違っていて作業工程ごとのチェックや最終の検査で品質を揃えています。また、工場の場合は生産設備による差異も大きく人の経験で設備の違いや環境の違いを調整することも良くあります。こうした実情を理解せずにRPAツールを導入すると、言うまでもなく期待通りの効果を得ることは難しいでしょう。筆者の経験から、組立加工系製造業(自動車、機械など)ではRPA導入に成功する企業が増えてきましたが、プロセス系製造業(化学、素材、食品、製薬など)ではまだ試行錯誤しているようです。その理由として考えられるのは、組立加工系に比べてプロセス系は生産設備の違いや環境(温度、湿度、光、ホコリなど環境条件)の違いによる微妙な調整が難しいことによるものです。つまり、属人的で業務内容の手順や管理が明確に規定されていない場合や、ERPの管理要件だけでは業務が実施出来ない内容だと失敗しやすくなります。例えば、担当者の人事台帳はERPのマスタにありますが、その担当者のスキル(設備操作の習熟度や業務遂行に必要な経験や知識など)のスキル情報は現場ごとに個別で管理されていてERPの中には無いケースが大半です。こういうケースでは、ERP+RPAで業務処理を自動化/効率化しようとしても差異が大き過ぎてRPAの効果が出せません。RPAを導入する前に、対象となる業務の可視化や標準化をしておけば担当者ごとに属人化してしまったオペレーションごとにRPAの設定をしなくても良くなるため、RPAの開発工数を最小限にすることが出来ます。また、ERP+RPA導入のタイミングで業務プロセスをまとめることが出来れば、業務を標準化出来ます。業務の標準化によって、RPA開発工数を最小限にするとともに、RPA導入による効果を高めることが可能となります。つまり、バックオフィスのIT系ERPシステムなどと比べて工場のOT系MES/MOMシステムやその管理帳票(紙やExcel帳票など)の方が複雑で業務毎、担当者毎の差異やバリエーションが大きいため現行業務をそのままRPAで再現しない方が良いと思われます。

■業務の可視化と標準化をひと手間入れるとRPA導入効果は飛躍的に高くなる

 前述したとおり、ERP+RPAによる効果はバックオフィス業務を対象とした業務よりも工場の生産業務へ導入する方が難しいようです。その理由は、同じ業務でも作業手順や管理ノウハウが属人的で人によって微妙に異なる事に依るものです。RPA導入のタイミングで業務の“見える化”と“業務の標準化”を行えば、RPA導入効果を2倍、3倍に高めることが可能となります。

 具体的には、まず紙やExcel帳票を洗い出して、そのなかから「①複数の組織で情報共有する帳票やレポート(仕様書や実績報告など)であるもの」と、」②ERPやMESなど基幹システムからのデータが参照されているもの」を選んで、これをBIツールのレポートなどで可視化するところから考えて、そのレポートを作る手段としてRPAを活用するという2ステップで考えてみます。つまり、まず情報を利用するユーザーにとって分かりやすく、見える化したレポートを考えてから、RPAをそのレポート自動作成ツールとして最大限活用するというアプローチです。成果物となる“見える化したレポート”を議論する過程で。属人化していた業務手順やデータを標準化することが出来ます。このやり方ならば、比較的スムーズに業務を標準化に導くことが出来ます。その次のステップで、RPA導入による“見える化したレポート”の自動作成を目指します。生産管理の計画実績管理や、作業進捗管理など紙やExcelで行うより作成の手間と時間を省くことが可能となります。バックオフィス系のRPA導入よりは、ひと手間余計に掛かりますが導入効果をしっかり出すことが出来ますのでぜひ一度試してみることをおすすめいたします。

以上

◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

業界トップランナーである鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第35回ERP+RPAは普及拡大フェーズへ、RPAは今後どの領域に加速するのかはいかがでしたでしょうか?後半の「業務の可視化と標準化をひと手間入れるとRPA導入効果は飛躍的に高くなる」の部分はまさにその通りと思った次第です。どうせ業務を自動化するならレポートまで含めて行った方が、今後の業務改善にも好影響を与えると思いました。人が介している業務の場合、人が業務改善に気が付くこともありますが、RPAでの自動化の場合、特に何もなければ(それはそれでいいのですが)永遠にその業務を実行し続けるだけで、何か改善のきっかけを違憲してくれるわけではないと思うのです。そういう意味でもひと手間加えて見えるかを実現するのはよいと思いました。

このコラムを掲載いただいている日商エレクトロニクスは自社での導入経験もあり、商社、ITサービス企業への実績も送付です。ERP-RPAについて興味がある方は是非、日商エレクトロニクスまでお問い合わせいただけるとよいと思います。

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このコラムを連載いただいている日商エレクトロニクスでは先駆者としてRPAの自社導入にも取り組んでおり、経営企画部、財務経理部、人事総務部の3部門でRPAをGRANDITE連携で導入し、ROI 590%と770万円のリターンを実現しています。そして成功事例の分析資料も以下のセミナーレポート内で公開しています。興味がある方は是非ダウンロードください。こちらにはガイドライン的なものも書かれています。

【レポート】ERP勉強会 次世代ERPに求められる条件
https://erp-jirei.jp/2018/03/23/semi-35/

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