業界トップランナーである鍋野敬一郎氏のコラム「ERP再生計画」第18回「ERP+RPAで出来る究極の働き方改革、RPA+ERPにAIとBPMを組合せる」を公開しました。
□はじめに
さて今回の一連のコラム(第16回、第17回、今回)は、ERPよりもRPAの説明の方が多くなってしまった感もありますが、基本に立ち返って「ERP再生」を中心にあるべき姿についてこれからのソリューションを考えてみたいと思います。ここ最近RPAが注目されている理由として、人手不足や人件費高騰といったビジネス状況において“働き方改革”への取り組みが求められていることによります。つまり、現場担当者の作業負荷を減らして少しでも働きやすい仕事環境を整えなければ、この先業務が廻らなくなるという危機感があります。ERPは、会社全体としては、コスト削減や効率化に貢献しますが現場のオペレーションは増えるケースが多いと言えます。増える作業の内容の大半は、煩雑な入力作業と確認作業なのです。ここが、RPAやAI-OCRを使うポイントとなります。ERP+RPAは相性が良いと言われる理由が、ここにもあります。
■ルーチンワークに潜む属人的な作業、RPA導入が一巡してからやるべきこと
この3年間で国内のRPA市場は、8億円(2016)→35億円(2017)→88億円(2018見込、出所はITR調査発表より。図表は#16に掲載しています)と10倍以上に急成長しています。調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)の予測では、2022年に400億円まで成長するとの予想です。この発表が示唆しているのは、RPAがツールとして優れているという以上にこうした省力化、効率化のツールに対するニーズが今後も高まるということです。人手不足と人件費高騰は、今後も続くのは間違い無いと思いますが、企業は限られた人的リソースを出来るだけ付加価値の高い領域へシフトしていく必要があると思われます。
これまでのERPは、主に会計領域(財務会計や管理会計など)を中心に導入されていましたが、最近では販売管理や在庫管理、調達管理、さらに生産管理など幅広い領域に導入する企業が拡大しています。導入するERPもオンプレミス型ERPからクラウド型ERPへシフトしています。これは、ERP導入に1年以上の時間を掛けたくないという企業が増えているからです。クラウド型ERPだと、サーバ構築やERPのインストール作業などが無くなり、最短3ヶ月程度で稼働させるケースも珍しく無くなりました。RPAと同様に、即効性が高く手頃な価格で利用できると評判です。クラウド型ERPは、標準機能をそのまま利用するため不足する機能を補完する必要があります。一般的に、例外処理や標準プロセスに入らない業務は、Excelファイルで管理フォームを作成してこれを使って業務を進めるというやり方をします。RPAツールは、ExcelなどMS-Officeソフトやメール、ウェブなどに強みを発揮します。例えば、米国RPAベンダのUiPath社(ユーアイパス)の創業者兼CEOダニエル・ダインズは元マイクロソフト出身です。ERPに足りない機能をExcelやウェブで補うのは、ERPをカスタマイズするより簡単です。また、英国RPAベンダのBluePrism社(ブループリズム)は、金融系や医療系にユーザーが多くこうした理由でセキュリティについて強みを持っています。国内で先行してRPAを導入している大手金融機関や総合商社などでは、現在急ピッチで全社各部門へRPAを展開しています。働き方改革に対する有効な対策として、ERPシステムに関連する入力作業やチェック作業などをRPAで自動化しています。
■クラウド型ERP+RPAによる究極のバックオフィスシステムを狙う
クラウドERP+RPAという使い方は、今後急速に加速していると予想されます。その理由として、親会社や規模の大きい子会社はこれまで通りパッケージ版のERPシステムをベースに、カスタマイズやアドオンでこれまでの機能や操作性などを継承する使い方が続くと思われますが、それ以外の子会社やグループ関連企業はクラウドERPにリプレースされる可能性が高いと考えられます。その理由は、慢性的なERPの技術者不足とビジネス環境の変化が今後も続くことが予想されることによります。さらに、大企業など約2,000社が採用しているSAPの現行製品SAP ERPが2025年で保守期限終了(以降は別途で有償対応)を発表していて、これを次バージョンSAP S/4HANAへ移行する必要があるのですがパッケージ導入にこだわりすぎると技術者不足で保守期限までに間に合わない可能性があります。
最近のERP市場では、優秀な技術者やコンサルタント、プロマネなど技術者が不足していて昔のようにERPを自社に合わせてきめ細かく作り込むリソースが確保できなくなっています。そこで、レガシー化したオンプレミスのERPを、クラウドERPでシンプルに置き換える決断をする企業が増えています。パッケージ版より導入期間も短く導入費用も安価なのですが、機能や処理性能に制約があるケースも多く、不足する機能を補完するためにはクラウドERPと連携する他システム(他パッケージやウェブサービス、独自開発したマイクロサービスなど)やExcelファイルでの業務管理による対応となります。さすがに手作業に戻すことはありませんが、新しいシステムにして機能ダウンして現場担当車の作業負荷ことはありません。そこで、他システムとの連携やExcelファイルなどの作業をRPAで巻き取るというやり方でカバーします。BluePrism社のRPAは、作業内容を部品化してこれを自在に再利用することが可能です。ERP+RPAの対象とする作業内容を、BPM的な考え方で部品化した標準プロセスをベースに組み合わせで組み替えます。不足する機能は、そこだけ追加開発や手作業で対処すれば概ね対応出来ます。こうしたERP+RPAの高度な使い方は、まず全社にRPA導入が一巡してからの取り組みとなりますが、これならば現場担当車やIT部門の負荷を抑えつつ、ベンダの限られた技術者だけでも対処できると思われます。RPAは製品ごとに特徴があり、用途や目的に合わせて使い分ける方が使いこなしやすいようです。製品のバージョンアップや機能強化も早いので、新しいものをどんどんチャレンジすることをお勧めします。
◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より
鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第18回「ERP+RPAで出来る究極の働き方改革、RPA+ERPにAIとBPMを組合せる」はいかがでしたでしょうか?このコラムを掲載いただいている日商エレクトロニクスでは、自社で「ERP+RPA」を実施しており、その成果も調査データと合わせて公開しています。興味がある方は以下をご覧の上、資料をダウンロードください。
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このコラムを連載いただいている日商エレクトロニクスでは先駆者としてRPAの自社導入にも取り組んでおり、経営企画部、財務経理部、人事総務部の3部門でRPAをGRANDITE連携で導入し、ROI 590%と770万円のリターンを実現しています。そして成功事例の分析資料も以下のセミナーレポート内で公開しています。興味がある方は是非ダウンロードください。こちらにはガイドライン的なものも書かれています。
【レポート】ERP勉強会 次世代ERPに求められる条件
https://erp-jirei.jp/2018/03/23/semi-35/