ほんの半年前には、ソーシャルディスタンシングというものが公共の場で交流やビジネスを行う上での当たり前の方法になるとは、誰も想像していなかったことでしょう。しかし、ちょうど今年の半分が過ぎた今、マスクや手指消毒剤をつけたり、現金を避けたり、他人との距離感に警戒したりせずに買い物に行ったり、食事をしたり、銀行に行ったりしていた頃のことはほとんど思い出せません。かつては考えもしなかったことですが、車のバックミラーにマスクをぶら下げておかないと車にも乗れなくなってしまいました。他人との距離をどのように捉え、安全性を確保し、可能な限り他人と接触しないように工夫するのかが、これからの金融機関をはじめとする多くの産業のビジネスのありかたを決めています。
それと同時に、このCOVIDの流行のおかげで、銀行でのサービス需要が急増しています。低金利を利用した借り換えや新規融資の申し込み、既存債務の返済猶予、投資ポートフォリオの変更や引き出し、日常的な口座サービスなど、金融機関は顧客とのやりとりに追われていますが、このような作業は実際は自宅から行われなければなりません。金融取引が急激に増加した上に、安全な場所から離れて作業をしなければならないという状況が重なり、金融機関はテクノロジーの優先順位をよく見極め、それを迅速に実行しなければならなくなりました。
銀行管理研究所(BAI)が最近次のように述べました。
小売銀行ではCOVID-19の拡大により従業員のリモートワークへのシフトが急速に進み、実行しなければならない業務量が大幅に増加したことで、業務の進め方に大きな変化をもたらされました。
デジタルファーストの戦略がある銀行ではこのような状況に何年も前から備えてきました。世界的なパンデミックを予想し具体的に準備していた銀行はほとんどありませんでしたが、大規模なデジタルトランスフォーメーションにより10年前には想像もできなかったような方法で顧客を満足させることができるようになっています。
つまり、金融機関はソーシャルディスタンシングを希望する顧客要望に対応する必要があるため、どのように自動化に頼りつつデジタルトランスフォーメーションの優先順位を評価するのかという問いかけを迫られているということです。
新たな生活様式での事業継続性の達成
テクノロジーに対する投資や導入を大量に推進してきたデジタルトランスフォーメーションは2020年以前からすでに珍しくなくなっていましたが、COVIDの危機で何が変わったかというと、デジタルトランスフォーメーションの優先度と課題をいかに明確にせざるを得なくなったかということです。自動化、モバイル体験、コンテンツの処理、そしてこれらが存在するプロセスは、ソーシャルディスタンシングという今では当たり前の枠組みに迅速に適応しなければなりません。テクノロジーの必要性が明らかになった「ソーシャルディスタンシング」には、ビジネスを行うための物理的な(人と人の)距離と、仮想的な(よりスマートなテクノロジー体験が得られる)距離の両方が含まれています。もしこれらが以前から銀行のデジタルトランスフォーメーションの課題に入っていたならば、銀行がビジネスを行う上でソーシャルディスタンスを取り入れるようになった今ではこれらが最優先事項に変わっています。ソーシャルディスタンシングは、顧客サービス、業務効率、金融犯罪や詐欺に対する防御に直接影響を及ぼし、法規制を順守するための中心的な役割を果たしています。
人工知能(AI)は、ソフトウェアボット(ロボットによる業務自動化=RPAで登場)とともに銀行でソーシャルディスタンシングを機能させるためのソリューションとして、すぐに最前線に躍り出てきました。先に引用したBAIの情報源によると、ボットは対面での顧客サービスの代替として急速に展開されています。
デジタルファーストの戦略を実現するためには、会話型AIが特に重要です。チャットボットが普及してから大きく進化した現代の会話型AIは、顧客や従業員との会話を率先して実行できるようになりました。これにより、現代のデジタルファーストの銀行は顧客の問題解決を手伝うバーチャルエージェントを提供することができるようになりました。
実際、現場の顧客エンゲージメントで人間の代わりにボットを使用することは、AI主導の自動化において次の大きなフロンティアになることが約束されています。
そのような期待があるにもかかわらず、AI技術では、今では当たり前になっているソーシャルディスタンシングに銀行が適応することを解決できません。私たちは効率化や改善のために自動化することに慣れているので、エンゲージメントの基本的なプロセスが疑問視されない場合にはこれらは単なる調整に過ぎないことをすぐに理解します。したがって、トランスフォーメーションを単なる自動化と区別しているものは、銀行がどのように運営しているのかや、従業員、顧客、犯罪の脅威、規制機関とどのようにやりとりしているのかについて、厳しい質問を投げかけなければならないという意思そのものです。ソーシャルディスタンシングが銀行のビジネスのやり方を変えてきたということは、必然的に、銀行は自動化、テクノロジー、そして人々(顧客や従業員)との関わり方をどのように捉るかという疑問を投げかけざるを得なくなったということです。通常のビジネスをスマートなビジネスに変えるためには、人、プロセス、コンテンツの基本的な相互作用に疑問を持つことから始まります。
デジタルIQを上げる
COVIDの危機に対応するために銀行業務を変革するには、従来の業務の進め方に疑問を投げかけ、「これまでのやり方」を問題として捉えようとする意欲が必要です。問題に直面し、それを客観的に見て、機能の仕方を理解するための適切なツールを持ってくることこそが、事業継続のための変革における第一歩なのです。プロセス、コンテンツ、テクノロジーを見直すこの最初のステップは、みなさんの「デジタルIQ」を高めるでしょう。
銀行のデジタルIQを高めるというのは学術的な活動ではなく、COVID-19の流行が私たちに押し付けた社会経済的な状況にビジネスプラクティスを適応させ、自動化をサポートするために基本となるものです。プロセスはAIのために再設計されており、顧客オンボーディングの日々の作業、クレジットや融資などのサービス提供、サイバー攻撃や個人情報の盗難、マネーロンダリングから保護することが仮想化や自動化技術がソーシャルディスタンシングのために必要である一方で、よりスマートな犯罪者に悪用される可能性を高めるため、現在では徹底的に再検討する必要があります。プロセスやテクノロジーの依存を疑うために適切なツールを持つことは変革を成功させるために貴重な第一歩ではありますが、自動化自体のインテリジェンスを高めること、つまり不審な行動、顧客単価向上の機会、コンプライアンスの過失を発見するためのIQを高めること、も同様にきちょうないっぽですです。
金融機関は、デジタル戦略について難しい質問を投げかける意欲や、それを実行するための適切なツールを持っているかどうかによって、さまざまな程度の成功を収めながら、これらの課題に対応していくことになるでしょう。どのような危機においても事業継続性を維持するためには、根本的な状況が急速に変化しているときに、収益の流れ、利益、満足度を維持する方法を迅速に見つけることです。銀行がプロセスとそれをサポートするテクノロジーを新しいビジネス状況に適応させれば、顧客サービスの自動化、文書処理、脆弱性への対応などのメリットが得られます。COVIDが変えてしまった新たな生活様式では、ソーシャルディスタンシングを事実として受け入れ、ビジネスを適応させて生き残り、それに伴って成長することを意味します。
COVIDの危機は明確に予測できなくてもいずれは過ぎ去るでしょう。しかし、ソーシャルスペースや物の交換(紙幣が最たる例です)に対する捉え方や、テクノロジーに期待する機能に対する考え方に対しては、永続的な影響を与えることになるでしょう。勝者となった金融機関はこれらの事実をより早く受け入れ、ソーシャルディスタンシングをビジネスプラクティスの中核的なコンピテンシーとして機能させる方法を見つけています。
参考ブログ
本コラムはこちらのブログを参考に執筆者の見解でまとめたものです。Abby社の公式見解ではありませんのでご注意ください。