SCM再生、成功の鍵はERPとRPAテンプレートとAI 

業界トップランナーである鍋野敬一郎氏のコラム「ERP再生計画」第30回:SCM再生、成功の鍵はERPとRPAテンプレートとAI」を公開しました。

□はじめに

 今回世界中に広がって新型コロナウイルスによる影響は、グローバル展開している企業にとってサプライチェーンの分断化という全く想定外の事態を引き起こしました。特に自動車や携帯電話などのハイテク製品は、複雑で高度なセンサーやデバイスが多数使われているため、たった1つのパーツが揃わないだけでも製品は完成しません。今回は、新型コロアウイルスが終息したあとに製造業が取り組むサプライチェーン管理再構築(SCM再生)を想定して、ERP/SCMとRPAの導入についてご紹介いたします

■グローバル製造業のサプライチェーン再構築について

 新型コロナウイルスによる製造業のグローバルサプライチェーン分断は、これまでの常識を抜本的に見直すきっかけとなります。これまでのグローバルサプライチェーンは、コスト低減、納期短縮が重要だと考えられてきました。多くのグローバル製造業は、複雑で長いサプライチェーンを絶妙のバランスで構築していました。しかし、米中貿易紛争や新型コロナウイルスによってサプライチェーン分断が大きなリスクとして顕在化しました。製造業の売上は、完成品を出荷しなければ売上を計上出来ません。たった1つのパーツが揃わなくても出荷することは出来ず、売上を計上することが出来ません。今回のケースでは、中国からのパーツが届かなかったり、国をまたがる異動が禁止されて工場間のサプライチェーンが途切れたりすると完成品が出荷出来きません。長くて複雑なサプライチェーンが、原材料仕入から生産、売上、回収のリードタイムが伸びるため企業経営のリスクを招くことになります。つまり、新型コロナウイルス終息後はこのリスクを回避するサプライチェーン管理再構築に取り組む必要が出てきます。

 グローバル製造業のサプライチェーン再構築ポイントは、次の3つです。

1,主要生産拠点は3つ

 これまでは、生産拠点であり巨大市場である中国を軸として“チャイナ・プラス・ワン”という考え方がありました。“プラス・ワン”とは、中国以外にもうひとつ生産拠点を構えるという意味で、アジア新興国のタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどがその候補としてあげられます。しかし、今回のコロナショックで直面したのがサプライチェーン分断という製造業にとって致命的な状況です。製造業は製品を出荷しなければ売上を計上することが出来ないため、たった1つパーツが届かなくても製品出荷が出来ません。注文したお客様もいつまでも待てないため、注文をキャンセルして入手可能な製品へ乗り換えることになります。こうした状況から、コロナショック終息後は、この教訓を踏まえて“3つの生産拠点(日本:リスク回避型ノックダウン生産、中国:生産能力重視、アジア:中国以外の市場向け)”といった3生産拠点体制が再編の骨子となるでしょう。

2,クラウドERP/RPA連携、モバイル対応システムの整備

 サプライチェーン再構築の方針が3生産拠点となる場合、次に考える必要があるのはその情報収集です。これまでのサプライチェーン管理では、各拠点からの報告を生産管理本部で受け取るスタイルが多いと思われますが、これだとタイムリーに各拠点の情報を入手することが出来ません。つまり、人が生産状況のデータを作ってレポートするのではなく、必要な時に本部側がデータを収集出来る仕組みが必要です。ここで必要となるのが、クラウドERPとRPAです。クラウドERPであれば、各拠点の生産計画と実績データを日本の本社でいつでも入手することが出来ます。RPAは、クラウドERPには入っていないデータを他システムから集めて自動的に本部へ送る仕組みを素早く実現する手段として必要です。また情報を利用する手段は、PCからモバイル(スマホ/タブレット)へシフトします。その理由は、海外では通信環境が安定していないためモバイル端末を前提としたシステムの方が適しているためです。また、5G対応することでデジタルツインや収集したデータをAIで最大活用することも可能となります。

3,データ駆動型バリューチェーン・ネットワークの構築

 3つ目のポイントが、サプライチェーン再構築を成長戦略にも活かすという考え方です。具体的には、サプライチェーン+アフターサービス&メンテナンスとスコープを広げて受注から生産、販売からアフターサービスを経て廃棄まで、製品ライフサイクルの全てを網羅するバリューチェーン・ネットワークの構築を狙います。とは言え、こういうビジネス状況ですから必要最小限の対応でバリューチェーン網を作ります。再構築したサプライチェーン管理のシステムとアフターサービス&メンテナンスの情報からのデータをBIツールで一気通貫に可視化すれば実現することが出来ます。モノの動き(原材料・パーツ、仕掛品、完成品、保守契約情報など)を、“モノと場所”を中心に見える化します。この情報活用は、BIツールとRPAとExcelで結構かんたんに実現出来ます。注意すべき点は、単位変換とデータを取得した時間を属性情報として必ず入れることです。怪我の功名ですがこれによって、時系列でデータを見ることが可能となりますから、このデータを利用すればボトルネックやムダなプロセスがひと目で分かるようになります。

 システム化のポイントは、クラウドERPとRPAです。実際にやってみるとバリューチェーン・ネットワークの可視化レポートを作るのはそれほど難しくありません。もちろんこれまで通りExcelでも作れるのですが、このやり方だとExcelだと欲しい時にタイムリーに最新情報をとりあえず入手できます。やってみると、拠点ごとのデータの精度やズレなどが分かるようになりますので、そこを随時見直してください。

■ERP+RPA展開のコツは、RPAテンプレートとAIによるデータ駆動型モデル

 グローバルに展開している製造業のサプライチェーン再構築を具体例として、ERP+RPAの活用についてご紹介しましたが、落ち着いたところで取り組んで欲しいのが「データ駆動型スマート工場」の実現です。クラウドERPやRPAなどを利用して、各拠点のいろいろなシステムから“モノと場所の情報”を入手出来ます。収集したデータを活用して、データ駆動形スマート工場を実現することが出来ます。サプライチェーンの一連の業務処理において、膨大なデータを蓄積出来れば、データを分析して特徴や傾向を知ることができます。傾向やパターンがわかれば、状況やデータから次を予測することが可能となります。AI機械学習では、状況とデータの相関関係を解析することで高い精度の予測を行う事が可能です。例えば、サプライチェーン管理のデータを収集して、ある工場間の輸送が分断したり、特定の工場が使えなくなった場合の代替プランを迅速に見つけ出したりということが可能となります。コロナショックで得た教訓として、国内生産拠点を必要最低限で維持していれば、生産が止まるリスクは回避できるというのがあります。納期は遅延しますが、生産し続けることが製造業には必要です。どのような状況でも、ものづくりを続けることが会社の支えとなります。

 データ駆動型モデルとは、一連の業務において各工程やポイントで蓄積された同じレベル同じ粒度のデータを活用した仕組みです。例えば、会計システムではいろいろな支払い情報や請求情報を管理していますが、特定の取引先や特定の製品で見ると傾向やパター案があるのが分かります。昔居た会社で人事部に居た友人から聞いた話ですが、旅費経費生産の伝票を集めると、その人の食べ物の好き嫌いや行動パターンがちゃんとわかるそうです。「だからお前の馴染みの店も、俺は知っている」と言われて、なるほどと思いました。つまりそういうことで、定点観測したデータから次の行動が自ずと予測出来るのです。この結果は、蓄積されたデータが裏付けになっていますからAI機械学習が活躍するところです。また、RPAを利用すればいろいろなパターンの処理を自動化出来ます。RPAの処理をテンプレート化して、その組み合わせでより幅広い業務に対応できますし、これをひな形として他の会社でも利用できるようにライブラリー化しているベンダもあります。

 さて、今回はERP+RPAの応用編と言う感じでいくつかのお客様が取り組み始めているサプライチェーン再編についてご紹介しました。まだまだ新型コロナウイルスと人類の戦いは続きますが、過去の先達が乗り越えてきたように必ず今回も人類は勝ち残ると信じ、皆様のご健康と発展を願いつつ今後ともお付き合い頂ければと願っております。

◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第30回「SCM再生、成功の鍵はERPとRPAテンプレートとAI」はいかがでしたでしょうか?RPA、AIは普及・活用期に入っていると思いますので、今回のコラムも参考位なった方が多いと思います。このコラムを掲載いただいている日商エレクトロニクスは自社のRPA導入も含む経験が豊富であり、商社とIT会社については特に、ERPとの連携のノウハウも高いです。商社とIT会社の皆様でRPAの導入を検討されている方は、是非、日商エレクトロニクスのコンサルタントにご相談ください。良い提案ができると思います。

資料ダウンロード

このコラムを連載いただいている日商エレクトロニクスでは先駆者としてRPAの自社導入にも取り組んでおり、経営企画部、財務経理部、人事総務部の3部門でRPAをGRANDITE連携で導入し、ROI 590%と770万円のリターンを実現しています。そして成功事例の分析資料も以下のセミナーレポート内で公開しています。興味がある方は是非ダウンロードください。こちらにはガイドライン的なものも書かれています。

【レポート】ERP勉強会 次世代ERPに求められる条件
https://erp-jirei.jp/2018/03/23/semi-35/

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