「現状のまま」のプロセスの状態を理解する
多くの組織はデジタルトランスフォーメーションへの取り組みの重要な側面として、Robotic Process Automation(RPA)を採用しています。RPAは、設計が不十分であったり破損しているプロセスの自動化を回避しつつ自動化に適したプロセスを見つけ出すベストプラクティスを使用して、自動化プロジェクトを計画・実行するチームのために計測可能で有意な影響を与えることができる「デジタルワーカー」戦略を企業に提供します。「現状のまま」の状態のプロセスを評価する機能のおかげで、ROIの期待値を明確に設定し、俊敏なサービスの提供を保証し、改善されたカスタマージャーニーの利点を実現することができます。
RPAは、サービスの向上、プロセスの正確性の向上、そしてコスト効率の大幅な向上を約束します。サービスに焦点を当てている業界がこぞってRPAを採用している理由は疑う余地がありません。
もし組織がエンドツーエンドのプロセス実行を理解するために手動のアプローチを取っている場合、かなりの時間と資金を先行投資しているにも関わらず、全体像の一片しかつかめていないかもしれません。操作やバックルームトランザクションの実行をタスクとするソフトウェアは、膨大な量のプロセス関連データを生成します。そのデータを抽出して集計し、分析することで、「現状のまま」のプロセスに対する実用的な洞察が得られます。この概念はシンプルで実装しやすいように思えるかもしれませんが、ほとんどの組織が直面する大きな課題であることが証明されています。これが難しいのはなぜでしょうか。大きな理由の1つは、複数のシステムがプロセスのさまざまな側面を実行する場合、プロセスが古いアプローチをどのように使用しているかについての使い物になるビューを再生成することが事実上不可能だからです。もう1つは、主要なメトリックの生成に使用される分析ツールが、時間のコンテキストでプロセスの実行を表示するのではなく、単に時間内のスナップショットを配信するためです。
インテリジェントプロセスマイニングは、多くの異種システム間でプロセスデータを簡単かつコスト効率よく集約し、プロセス実行の100%が実際に動作することを反映するインタラクティブモデルとしてそのデータを再構成します。
RPAの価値を高めるプロセスインテリジェンス
現在のRPAイニシアチブのほとんどは、人間が介入しない構造化データを含む、大量かつ比較的単純なプロセスの自動化に焦点を当てています。非構造化データを含むプロセスや、人間がプロセスの一部である(または何らかの認知的推論を採用する必要があるかもしれない)より複雑な環境において、ボットがますます検討されています。複雑さと高度化が進むと展開コストが増大し、RPA ROIの正当化が困難になります。実用的なプロセスインテリジェンスにアクセスする機能は、人間の労働者が関与している場合と同じように、デジタルワーカー環境でも重要です。これにより次のことが可能になります。
気づかなかった冗長なプロセスを見つける
- デジタルワーカーサイクルを解放できるロボットプロセスの最適化(最も生産的なデジタル労働力でさえも生産性を高められる)を見つける
- 人間とデジタルワーカーの非効率的な引継ぎ、またはその逆を発見する
- プロセスごとのデジタルワーカーの経済的影響に関する計測可能なデータを提供する
- コスト、精度、効率、期間の観点から、人間とデジタルの労働力を比較する
プロセスインテリジェンスプラットフォームは、自動化されたプロセスのパフォーマンスを定期的に監視し評価するロボットオペレーティングモデルのために、対応するリスクやコンプライアンスのフレームワークを例示化します。
- プロセスガバナンス用のデータ駆動基盤を確立し、リスクを軽減するための手順を明確に文書化・自動化する
- プロセスをキャプチャし、スタブアウトされたRPAプロセスにエクスポートし、複数のデータ基準に基づいて知覚価値スコアのプロセスをランク付けする、RPAエクセレンスセンターを作成する
- プロセスの例外を見つけ修復を自動的に開始することにより、RPAの範囲を拡大する
- デジタルプロセスと人間のプロセスの両方のより広範なライフサイクル管理と、それらの相互作用を実行する
適切なRPAの機会を対象とする
プロセスマイニングは、さまざまな業界でプロセスフローを自動的にモデル化して提示するために使用されます。製造現場で最初に使用されたデジタルツインと同様に、実際のデータに基づいて、実際に発生したビジネスプロセスの内部動作を公開します。詳細なプロセスデジタルツインは、インテリジェントなプロセスマイニングの中心です。直感的なBIスタイルの分析により、リアルタイムプロセスに近いプロセスフローを簡単かつ迅速に検出、分析、自動監視し、自動化の機会や課題の本当の底深さと幅広さを明らかにします。
インテリジェントプロセスマイニング戦略が取り組む4つの重要なRPAの課題を以下に示します。これらの課題は実装と大規模な持続可能性の両方を改善します。
最大の自動化可能性を持つプロセスを対象にし、評価時間を短縮する
- 複数のビジネスアプリケーションにまたがる実際のプロセス実行の包括的なエンドツーエンドのビューを1つ提供し、主要な自動化の機会と潜在的な副作用を明らかにする
- すべてのプロセスのバリエーションや、時間とコストの影響を表示する実際のプロセス実行データに基づいて、価値の高い自動化候補プロセスを簡単に選別する
- トランザクション数、プロセスステップ数、プロセスAHT/TAT(期間)、トランザクションあたりのコストに基づいて、計測可能なデータ駆動の投資収益率の計算を可能にする
- 骨がの折れ、費用がかかり、時には主観的な手動プロセスでの評価を排除する
- インテリジェントプロセスマイニングは、100%プロセスの可視性を提供する。予期しない高リスク・高コストのパターンを見つけ出す。
破損したプロセスや実行が不十分なプロセスの自動化を回避する
- 100%「実行時」のプロセスを可視化するため、チームはボトルネック、コンプライアンスリスク、RPA実行前の誤った順序といったプロセス実行の問題を識別、分析、修正できる
- RPA開発コストを増幅し、評価時間を引き延ばしてしまう破損したプロセスを回避または修正する
- RPA投資の範囲と価値を拡大できるプロセス実行の潜在的な変更を見つけ出す
影響を受けるプロセスのためにRPA実行後の可視性を維持する
- 展開後の自動化投資が期待どおりに機能していることを確認する
- 自動化のアップストリームやダウンストリームの影響を監視して、継続的なプロトコルのコンプライアンスを保証する
- 混合モードシナリオ(人間の支援が組み込まれたボット)での自動プロセス実行監視により、ROIコミットメントを保護する
- 適切な人に適切なタイミングでリアルタイムのアラートをトリガーする詳細なシナリオまたは条件を簡単に指定する
- 毎日自動的に監視される、計測可能な実装後のコストの影響を明らかにする(将来の自動化イニシアチブのためにデータに裏打ちされた正当性を提供する)
企業規模でRPAを実行する
- 航空交通管制塔としてプロセスインテリジェンスを使用して、企業全体のビジネスプロセスをほぼリアルタイムで監視することにより、コンプライアンスとリスクガバナンスのフレームワークを確立する
- 関係するすべてのプロセスとビジネスシステムで自動化を同期させるために、数十から数百、さらには数百から数千のボットのスケーリングには重要なコマンドと制御が必要
- 自動修復プロセスを生成するためにアラート機能を使用して、ボット対応プロセスの実行をリアルタイムで監視する
独自のプロセスデジタルツインの構築
プロセスデジタルツインとも呼ばれるインタラクティブプロセスモデルは、RPAボットまたはITシステムによって実行されるプロセスフローを100%可視化するだけでなく、予期しない、あるいは望ましくない動作を引き起こす複雑なダイナミクスを理解することを可能にします。みなさんはおそらく、すべてのサポートインシデントや割り当てられたタスクに関する意味のある情報を漏れなく確実に取得するために、さまざまな部門システムと同様に、ITプラットフォームに多額の投資を行っていることでしょう。
インテリジェントプロセスマイニングは、プロセスフローを自動的に検出(Discover)し、プロセスの動きを分析(Analyze)する高度なツールを提供することにより、その価値をさらに引き出し、生産性、顧客満足度、サービス品質を最適化(Optimize)します。次に、プロセスの実行をほぼリアルタイムで監視して最大のパフォーマンスを維持します。
プロセスインテリジェンスプラットフォームは、データを保存するために使用されているシステムの数に関係なく、エンドツーエンドでRPAプロセスのあらゆる側面を改善するのに役立ちます。任意の数のITシステムからのプロセスデータを実用的な洞察に変換することで、より正確で自動化された意思決定が迅速かつ低コストで行われます。インテリジェントプロセスマイニングによって、サービス提供のあらゆる側面に持続可能な影響を与えるデータ駆動の意思決定を自信をもって行うことができます。つまり、インテリジェントプロセスマイニング技術を利用すれば、より短時間かつ低コストでプロセスが最高の効率で流れるようになります。
可視性の向上、それはすなわち、変化の加速です。
本コラムは「https://blog.abbyy.com/how-intelligent-process-mining-improves-rpa-results/」を独自の見解で意訳したものであり、原作者の意図を完全に表したものではありません。予めご了承ください。
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このコラムを連載いただいている日商エレクトロニクスでは先駆者としてRPAの自社導入にも取り組んでおり、経営企画部、財務経理部、人事総務部の3部門でRPAをGRANDITE連携で導入し、ROI 590%と770万円のリターンを実現しています。そして成功事例の分析資料も以下のセミナーレポート内で公開しています。興味がある方は是非ダウンロードください。こちらにはガイドライン的なものも書かれています。
【レポート】ERP勉強会 次世代ERPに求められる条件
https://erp-jirei.jp/2018/03/23/semi-35/