ERP再生がデジタルイノベーション成功の鍵

業界トップランナーである鍋野敬一郎氏のコラム「ERP再生計画」第15回「ERP再生がデジタルイノベーション成功の鍵」を公開しました。

□はじめに

日本の強みは、現場の熟練者によって磨き上げられた技術と経験の蓄積による“高品質なものづくり”や“おもてなしのサービス”にあると言います。日本が目指すべきデジタルイノベーションとは、熟練者“匠”のなかにあるこの技術や経験というアナログの暗黙知を、センサーやカメラなどで得たデジタル化データや新しい技術を使って形式知に変えて新しい価値を生み出すことです。つまり、新しい価値を生むのは、デジタル化されたデータとこれを活用したサービス(ソフトウェア)です。そして、このサービスを顧客やビジネスパートナーへ提供するためには、契約や取引の機能が必要です。新しい価値を提供するサービスに、契約管理や取引処理など機能を提供するのはERPシステム(基幹システム)となります。これまで、デジタル化についての説明(#13)デジタルイノベーションの実現とそのシステム構成(#14)について紹介してきましたが、今回はそのまとめとしてERPシステムがその成功を左右する役割であることをご説明します。

■レガシーERPと次世代ERPの違い

日本市場にERPが登場したのは1990年台後半ですが、その後10年間でERPを導入したのは製造業や大企業でした。実際に幅広い産業や中堅中小規模の企業でERPが普及したのは、2000年台半ば頃に国産ERPや外資系ERPの日本化が整った頃です。つまり、日本にERPが定着してからようやく10~15年間経過したと言えます。この10年以上の進化と環境の変化が、レガシーERPと次世代ERPの違いとなります。(図表1)

出来るだけ分かりやすく説明するために、ERPをカーナビに例えて説明したいと思います。10年前に企業が導入したERPの大半は、会計を中心とした仕組みです。それまでの企業システムは、部門ごとにバラバラで会社全体の財務情報はバラバラのシステムを寄せ集めて集計したものでした。部門ごとに不整合があり、集計するのに手間と時間が掛かりました。この問題を解決したのがERPの“管理会計”です。ERPの“管理会計”が、経営者に必要な業績情報を素早くレポートしてくれました。レガシーERPをカーナビに例えると、エリアごとにバラバラだった手書きの地図を1つフォーマットで統一して、現在位置と目的地を入力すれば、直ちに最短ルートを表示してくれる機能です。カーナビが無かった頃は、紙や本の地図を見ながらしばしば道に迷っていましたから、現在位置が表示されて進む先を分かりやすくガイドしてくれるカーナビは大変便利でした。これを実現したのが、「統合マスタ」「統合データベース」「データ自動収集」この3つの機能です。

しかし、このERPでは解決できない課題もありました。ときどき事故渋滞にぶつかったり、工事中で迂回しなければならなくなったり、距離は最短でも高速道路や有料道路を利用するなど状況や条件に合わせた判断は苦手だったりします。過去の実績データを踏まえた見込み通りには強いのですが、想定外の事案が生じると対処が難しくなります。昔の大量生産時代と同じような事前計画にもとづく製品/サービスの供給(サプライ)型の仕組みです。このERPを、最近では10数年前のレガシーERPと呼びます。これと比較して、次世代ERPはこの10年間で最新技術や顧客ニーズに対応した新しいソリューションへ進化しています。

次世代ERPには、AI人工知能や最新状況に対応したサポート機能が搭載されています。事故やトラブルの発生に即時対応して、リアルタイムの状況変化に柔軟かつ的確なガイドを示すことが出来ます。入出力方法も音声入力/音声ガイド/遠隔誘導などが可能です。次世代ERPに例えた新しいカーナビが優れているポイントは、機能が増えたことではなくこれまでのやり方を踏襲しつつ、柔軟性と拡張性を兼ね備えたスピーディーな対応が出来ることです。『レガシーERPは、過去データを蓄積してこれを分かりやすく表示する仕組み』です。経営向けに、大量実績データを整理して、見やすく表示してくれます。これに対して次世代ERPは、刻々と変化して予想できない未来予測から素早く対処すべき選択肢をガイドしてくれます。予定ルート上に事故やトラブルが生じれば、迂回路を見つけ出して提案してくれます。複数ルートから、距離/時間/コストなどを比較して状況に見合った提案をしてくれます。必要に応じて、外部のコールセンターなどからサポートや支援を受ける事もできます。つまり、状況変化にリアルタイムに対応して、その時点における適切な選択肢をガイドするデマンド型の仕組みです。

■次世代ERPの特徴とデジタルイノベーションとの融合による効果

想定外のトラブルが生じたときや、状況が変わって目的地が変更される場合、スピード重視やコスト重視などに合わせてルートや到着時間をガイドしてくれます。どの選択肢を選ぶかは、ドライバー(経営者)次第ですが過去データだけを見て自分で判断するよりも、過去データと最新の現在情報を読み込んで未来予測を提示してくれる方が正しい選択を選ぶ確立は高くなります。つまり、未来予測する機能を備えつつある点が重要です。熟練者が優れている理由は、知識と経験に裏付けられた問題解決能力と精度の高い予測にあると言えます。これを仕組みとして底上げしてくれるのがAIや次世代ERPと行ったシステムになります。(図表2)

<レガシーERPと次世代ERPの違い>

1,レガシーERP(会計中心)→次世代ERP(会計+ロジ+新技術による価値提供)

レガシーERPは、会計中心(財務会計/管理会計)

実績データ収集&整理(財務情報)によって経営管理を支援する仕組み。

次世代ERPは、会計+ロジスティクス(販売/購買/在庫/物流/生産など)

財務指標と非財務指標を幅広い情報を蓄積して、このデータから予測が可能。さらに、AIやブロックチェーンなど技術と連携してデータ活用による顧客満足度向上やスマートコントラクトやスマートロジスティクスなど新しいサービスの提供が出来る。

2,レガシーERP(対象は経営層)→次世代ERP(対象は経営層/ユーザー/顧客など)

レガシーERPは、経営層を対象とした業績管理の仕組みです。

次世代ERPは、経営管理だけではなくERPシステムのユーザー(管理者/エンドユーザー)や、顧客への情報/サービス価値を提供することが出来ます。

3,レガシーERPは導入後機能が変わらない→次世代ERPは導入後に機能拡張が可能

次世代ERPは、「API連携による疎結合」「サイバーフィジカルシステム:リアルとサイバーの双方向連携(システム側で設定を変更すると現実の仕様も変更される)」「サービス化(サービスだけ切り出して顧客へ提供)」するなどが可能です。レガシーERPは、導入後に機能を変えることは出来ませんが、次世代ERPは他システムと連携して柔軟な機能拡張に対応することが可能です。特にお客様への価値提供は、その時々で求められる企業や要件が変わります。想定外の変化は予め予測することは出来ませんから、後付で他システムとの連携で柔軟かつ迅速に対処します。安定性と柔軟性という一見矛盾するように見えますが、こうした難題にも対処するのがERP再生に期待されるところだと思います。

このように、ERPを再生することで得られる効果が大きく違います。変化が激しい環境に機敏に対処出来て、企業内/企業グループ内だけではなく、取引先やその先のカスタマーへの情報/サービス提供にも対応出来るのが次世代ERPなのです。蓄積された企業データは、サービス化して経営層/ユーザー/顧客へ提供されます。次世代ERPの役割には、従来のバックオフィスである効率化/コスト削減に加えて新しいビジネスモデルによる価値創出が追加されます。

◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第15回「ERP再生がデジタルイノベーション成功の鍵」はいかがでしたでしょうか?

従来のERPはコスとをかけてリアルタイムで経営状況を把握するための「見える化」のためのシステムだったかもしれません。そう考えると経営者が迅速な経営判断をするためのERPと言っても過言ではなかったかもしれません。これからのERPは鍋野氏のコラムにある通り、業務効率向上、売り上げ向上のための武器としてERPに代わっていくのです。その時のERPはどのようなものがいいのでしょうか? 構築コストが重荷にならないようにクラウドベースがいいですよね。日本の企業文化を知った国産のERPで且つ、業界に特化したERPのほうが、カスタマイズが少ないため、即効性があり、柔軟なサービスとしてのERPを利用できそうです。業界に特化したERPは低コストで導入ができ、メンテナンスも容易です。商社やIT企業の皆様がERPの導入を検討される際に、是非、日商エレクトロニクスの名前を思い出していただきたいです。以下の2サービスは業界向けにカスタマイズされていますので、とても使いやすいものが、低価格でできると思います。興味がある方はぜひ以下の商品もご覧ください。

日商エレクトロニクスが提供する商社向け、IT企業向けテンプレートについては、以下をご覧ください。

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