業界トップランナーである鍋野敬一郎のコラム「ERP再生計画」第7回「次世代ERPがフォーカスするヒトを中心としたAI機能とは」を公開しました。
□はじめに
さて、今回の次世代ERPのテーマはサービス系の業種についてご紹介したいと思います。これまでの製造業と違って、サービス業の中心となるのはモノではなくヒトです。従来のERPでは、ヒトは重要な経営資源「人財」として扱うケースもありますが企業の業績が悪くなると減らしたいコスト「人件費」として扱われます。サービス業などにおいて、次世代ERPではヒトをどのように扱うことになるのでしょうか。
■人手不足が深刻なサービス業が成長するために取り組んでいること
日本の人手不足は、ついにバブル景気時代を越えたというニュースがありました。
バブル景気とは、1986年から1991年までの約五年間の空前の好景気を指しています。この時代は、土地や株式などの資産価格が高騰した時代です。1989年(平成元年)12月29日の大納会に日経平均株価38,957円という高値を付けているのですが、現在の株価が2万円程度であることを考えると、今では信じられないような状況です。札束が飛び交い、証券会社の新入社員ボーナスが100万円というあり得ない時代でした。結局バブル崩壊後この悪影響もあって、日本の景気は20年の長きに渡ってデフレ経済に苦しむことになるのですが、昨今の人手不足はその頃を上回る状況だと言われています。
こうした状況を踏まえて、IT業界で最近話題となっているのがRPA(ロボティクス・プロセス・アートメーション)やAI(人工知能)です。RPAについては、ERPを補完するツールという内容で本コラムの第三回で簡単にご紹介しています。AIについては、身近に感じるものでは自動車の運転アシスト機能として衝突防止安全機能や駐車支援機能などが市販車にも搭載されはじめています。(現状ではレベル3)大手自動車メーカーは、2020年代前半に完全自動運転(レベル5)を目指して開発を進めているそうです。またAI活用例として、みずほ銀行ではIBM Watsonをコールセンター業務に導入しています。IBM Watsonの言語処理機能(Natural Language Classifier, Retreve and Rank,など)使って、コールセンター業務の効率化と顧客満足度向上を目指しているとのことです。このように、AIは既に身近なところで少しずつ普及しはじめています。ERPなど業務システムでも、RPAやAIを使って作業を省力化したり自働化したりする便利な機能を提供する動きが広がっています。
(参考URL: https://robotstart.info/2016/09/29/mizuho-watson-yt.html)
(参考URL: https://www.ibm.com/watson/developercloud/services-catalog.html)
■次世代ERPがヒトにフォーカスする理由とその効果
これまでのERPは、経営者や管理者のために必要な情報や機能を提供してきました。
次世代ERPもこうしたところは変わりませんが、これまでのERPと違うのはLoB(ライン・オブ・ビジネス)と呼ばれる担当者の業務をサポートする機能をいろいろ備えていることです。例えば、人事管理の新しい機能としてAIを使ってあるポジションやプロジェクトに最適な担当者を提案してくれます。これまでのシステムでは、条件を満たす人材を抽出してリスト表示することは出来ても、誰が最も適任なのか、なぜ適任なのかは分かりません。また、条件に該当する人材が居ない場合には“該当者なし” です。AI搭載ERPには、多少条件に見合わなくても候補者リストをピックアップしてくれるような機能を提供するものもあります。また、担当者がやらなければならない処理を忘れていてもシステムがそれを知らせてフォローしてくれたりします。購買業務では、原材料を安く調達するために新しい調達先をネットなどから探して提案してくれるようなことも可能です。企業内や取引先など関連企業が取扱う情報やデータは膨大ですから、担当者の経験や熟練度によって業務を処理するスピードや効率には自ずと差が出てしまいます。しかし、業務経験が少なくてもAIが支援してくれれば熟練者同様にミス無くスムーズに作業を行うことができます。また、RPAを使えば繰り返して行う手間の掛かる作業は自動的に処理することも出来ます。ヒトの役割は、手を動かすだけの仕事から考えて判断することに重点が移り生産性が高くなります。ひとりひとりの担当者の生産性が高まることで、人手不足でも成長することが出来るようになります。こうした仕組みを実現するポイントは、次世代ERPがRPAやAIなどと連携するところにあります。具体的には、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)と呼ばれる、ソフトウェアが互いにやりとりするのに使用するインタフェースの仕様であることです。ウェブやクラウドの世界では、既にあたりまえの技術ですが、ERPなどの業務システムではまだ対応している機能も少ないのが実状です。外資系ベンダーのERPパッケージは、ウェブやクラウドと連携して機能を相互に補完する考え方が進んでいます。しかし、日本の商習慣と異なる点も多いため業種や業務内容によって使えないものが多いようです。最近注目されているRPAやAIですが、こうしたシステムを使うためにはAPIの対応や、適用する業務ごとに適正なデータを揃える必要があります。次世代ERPがヒトにフォーカスしている理由は、ERPの役割が単なるコストダウンや効率化ではなく企業の成長に直接支援できる領域が広がっているからです。前述したコールセンター業務や新しい調達先の提案などは、ケースバイケースの対応が必要となる業務なのでスピード処理や効率化は人手不足を補完する効果が期待できます。
□次回の内容
今回は次世代ERPがヒトにフォーカスした機能を搭載している理由と、その効果についてご紹介しました。次回は、ERPとAIの連携についてもう少し踏み込んだ説明をいたします。単純にERPのデータをAIで解析するというレベルを越えたソリューションの可能性についてご説明いたします。
◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より
鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第7回「次世代ERPがフォーカスするヒトを中心としたAI機能とは」はいかがでしたでしょうか?
私は古い人間なので、今の時代のERPのAIの話を聞くと、つい「ファジー」機能を思い出してしまいます。「ファジー」はもともとあいまいなという意味ですが、当日の家電で使われていた「ファジー」機能は人間が求める最適なレベルに家電の作業を設定するというものだったと思います。最適な対応をするということがERPがAI機能を搭載したERPに求められるものであり、これが実現するとかなり利用者のお客様の負担が軽減されるはずです。さて、この「最適な」という処理を行うAI機能ですが、その国の商習慣や業界慣習によってかなり違うと私は考えています。そう考えるとこのコラムが掲載されているERP事例サイトで主に扱っているGRANDITは国産のERPであり、メーカーの方針としてAIを打ち出してもいるので、ERPのAI機能に注目されている方は、GRANDITを是非検討するべきと思います。
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