次世代ERPを支えるIT基盤、マルチプラットフォーム戦略について

業界トップランナーである鍋野敬一郎氏のコラム「ERP再生計画」第五回「次世代ERPを支えるIT基盤、マルチプラットフォーム戦略について」を公開しました。

はじめに

IoTや人工知能(AI)など新しい技術やこれを使ったビジネスに注目が集まっています。いずれも膨大なデータを取扱うため、ビッグデータやクラウドなどと組み合わせて利用されます。従来のERPはオンプレミス型でしたが、今後はクラウドSaaS型のERPなどを用途に合わせて使い分けることになります。
今回は、次世代ERPを支えるIT基盤(プラットフォーム)についてご説明いたします。

基幹系システムとIoTやAIなどシステムを乗せるプラットフォームの違いとは

基幹系システムは、これまで社内やデータセンタなど社内で運用することが常識でした。しかし、外資系ベンダがERPのインフラをAWSやマイクロソフトAzureなどパブリッククラウドに置くことを推奨。その結果、丸紅やHOYA、AGC旭硝子など、国内でも100社以上の企業がERPをクラウド上で利用しています。
産業向けのIoTシステムでは、ゼネラル・エレクトリック(GE)が開発提供するIoTプラットフォーム「Predix(プレディクス)」やシーメンスが提供する「MindSphere(マインドスフィア)」などがコストパフォーマンスや手軽さからから、そのプラットフォームにクラウドを採用しています。AIなどディープラーニング(深層学習)、画像解析など大容量データ処理を高速処理するシステムもクラウドをプラットフォームとして利用するケースが多いようです。
企業は、システムの用途や目的に合わせて適材適所にIT基盤をオンプレミスやクラウドから選ぶことができます。企業システムは、既存システムはオンプレミス型で社内のサーバやデータセンタに置き、IoTやAIなど新しいシステムはクラウドに置くというマルチプラットフォーム構成が主流となっていくことでしょう。
こうしたトレンドを踏まえて留意すべきポイントは、OSやデータベースなどミドルウェアは利用するアプリケーションなどによって異なることから、そのアーキテクチャやツールの違いが問題となる点です。運用管理から考えると、バラバラに選ぶとセキュリティや運用コストなどにムダやリスクが生じます。
懸念されるのは、クラウドで手軽に利用できるサービスをエンドユーザーが安易に利用したことが、企業全体のリスクやトラブルを招くきっかけとなってしまうことが予想されます。

例えば、製品を利用しているユーザーへのアフターサービスを提供するためには顧客データが必要ですが、その情報は同時に販売代理店やパートナーとも共有することになります。IoT技術を利用したサービスをこうしたユーザーへ提供する場合、ユーザーが所有している製品とIoTサービスを関連付けてデータを管理する必要があります。しかし、顧客データが複数のシステムでバラバラに管理されていると、顧客データやユーザーの製品からIoTで取得した稼働データ、保全情報などが漏洩するリスクが高まります。これまでERPでは顧客マスタと取引情報を管理していましたが、ここに顧客が所有する製品から取得したIoTデータなども追加して管理することになるでしょう。管理しなければならないデータが飛躍的に拡大するとともに、そのデータを利用した新しいビジネスモデルにも対応する必要があると思われます。

攻めと守りのITに対応したシステムとそのシステム基盤

基幹システムは、会計、販売、購買、生産、人事など企業の業務処理に関わる情報を管理しています。
ERPシステムは、この複数業務を統合的に管理する仕組みです。企業全体の複数業務を統合管理できるので、経営管理に有効な情報を簡単に入手することが出来ます。経営資源となるヒト、モノ、カネを最適に配分する計画を立て、その結果データを収集管理することが出来ます。計画と実績を比較して、経営管理のPDCAをきめ細かく管理し経営者の意思決定を支援します。
こうした仕組みを一般的にバックオフィスシステムと言いますが、業務の情報を記録することから、SoR(System of Record)と呼ばれることもあります。また、顧客向けのサービスやパートナー向けのサポートなどを提供するシステムはSoE(System of Engagement)と呼ばれています。これは、IoT技術などを利用したモニタリングや、遠隔操作で機器や装置を制御するなど顧客向けの新しいサービスを提供します。このようなSoEのシステムは、顧客価値を高め、顧客が求めるサービスを提供して企業の売上や利益に直接貢献します。顧客ごとに、カスタマイズしたサービスを提供するなど出来ます。

具体的な事例として、建設機械に各種センサーやカメラ、位置情報システムなどを組み込んで、建設作業を遠隔でサポートする情報化施工「スマートコンストラクション」を実現出来ます。建設機械大手のコマツが提供しているKOMTRAXというシステムが、IoT技術を利用したSoEの仕組みとしてよく知られています。このIoT技術を利用したサービスは、工作機械の位置情報や稼働データを収集して省エネ運転や工事支援サービスを提供します。コマツは、工作機械という製品(ハードウェア)の提供だけではなく、製品から収集したデータを利用した独自ソフトウェアからのサービス提供やコンサルティングを新しい事業として展開しています。(IoTによる新しいビジネスモデル)KOMTRAXはさらに発展して、クラウド対応したKomConnectというシステムが開発されています。コマツは、マイクロソフト社と提携してクラウドサービス「Microsoft Azure」をスマートコンストラクションのIT基盤として採用しています。

※参考URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/business/nowon-azure-komatsu

これまで、ERPが稼働するシステムとKOMTRAXのような独自システムが稼働するシステムは別々のサーバやインフラで稼働するのが普通でした。つまり、ERP上で管理している顧客情報もKOMTRAX上で管理している顧客情報は別々に管理されていました。しかし、システムごとに顧客情報をバラバラに管理するのは、システムの運用管理の面からムダな手間やコストが掛かります。また、IT基盤となる仕組みが異なればセキュリティのリスクやトラブル発生時の対処に遅れが生じるかもしれません。今後はSoEへの取り組みが急激に広がると予想されますので、様々なシステムが乱立する前に全社のシステム基盤を中長期的な視点で見直す必要があるでしょう。管理のポイントは、システム監視システムとセキュリティのガイドラインを策定して、全てのシステムがこのルールに従うことです。IoTサービスの普及とともに、ウィルスやマルウェアによる被害が拡大していることから放置すると企業の信頼性を損ない兼ねないトラブルを生じることになるでしょう。次世代ERPには、IoTやAIなど機能が付加されることなども考慮して従来システム(SoR)と新しいシステム(SoE)の両方に対応出来るマルチプラットフォームへの備えが必要と思われます。

次回の内容

今回は次世代ERPやIoTなどの両方に対応できるシステム基盤について説明しました。これまでは、基幹系システムなどバックオフィスと顧客向けシステム基盤は別々に考えていましたが、今後はその両方に対応したものを考えていくことになります。
さて、次回はIoTサービスと連携するERPのイメージを掘り下げてみたいと思います。

以上

このコラムについて

ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より

鍋野敬一郎氏によるコラム第5回「次世代ERPを支えるIT基盤、マルチプラットフォーム戦略について」を読まれていかがでしたでしょうか?

今回のコラムではIoTについて書かれていますが、IoTはインターネットを活用する新たな基盤として注目を集めています。IoTはIoTを活用したサービス、製品展開、保守などのカスタマーサポートの強化、マーケティング活用など幅広い応用が期待できます。IoTを本当の意味で活用するためにはIoTにより接続されたシステムがERPに含まれるか密接に接続されることがとても重要になります。これによりお客様の情報がインターネットを介して直接に業務システムに反映されるため、業務が迅速化します。

IoTを活用したお客様のサービスは自社サービスの機能修正や顧客ニーズの対応によって変化していくため、当然IoTに連携したシステムにも変更が都度発生します。その際にも国産ERPであるGRANDITをベースにした双日システムズのERPソリューションは柔軟い変化に対応しやすいはずです。その意味でも私は双日システムズのERPを推薦したいです。双日システムズのERPソリューションに興味がある方は是非以下のページもご覧ください。

ERPソリューション

最後に脱線しますが、IoTソリューションは海外ソリューションに注目を集めていますが、国産のIoTソリューションが今後多くリリースされていきます。国産のIoTソリューションにも是非ご注目ください。

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