AIはOCRのためだけにあるのではない(野田貴子氏)

健康と経済への影響が出ているこのご時世で、自動化を正しく行わなくてはならないという緊急課題が新たに発生しました。今までのデジタルトランスフォーメーションでは、スマートなテクノロジーを通じて顧客とより親しくやり取りをすることに重点を置いてきましたが、今新たに優先するようになったことは、非接触型のビジネスと、より簡単に実現できる優れた自動化を可能にすることです。このシリーズで以前お伝えしたように、自動化の目標は適切なプロセス発見、つまり、適切なツールを使用して最大の変化をもたらす自動化を対象とするもの、で達成されます。非接触型ビジネスの自動化が新たな必須事項になりつつあるため、この指摘は真実味を帯びてきています。

これに関連して、多くの人はより優れた訓練しやすい光学式文字認識ソフトウェア(OCR)があればドキュメント処理がより簡単になると考えがちであり、AIを搭載した多くのOCRツールがその効果を期待されて市場に参入しています。しかし、複雑なカスタマージャーニー(顧客が購入に至るプロセス)や保険プロセスの経験が豊富であれば、OCRや自動化の真のメリットは、これらが導入される仕事のプロセスを変えることにあると認識しています。OCRの精度向上のうち最大90%は、作業プロセスの変更からもたらされることが長年にわたって立証されてきました。カスタマージャーニーやドキュメントフロー、画像処理、分類、分離、検証、統合の再設計を行うことが合わさると、認識をさらに効果的に行うことができます。

次に、ドキュメントそのものの問題があります。ACORDフォームのような大量かつ複雑な保険ドキュメント(入れ子になったテーブル、構造化されていないテキスト、多様な組み合わせや分量の中で移り変わる情報などが多い)を扱う場合、AIをOCRだけに集中させると、ドキュメントの種類ごとに膨大なトレーニングセットが必要になり、さらにはクリーンな画像、事前分類、識別、ページネーション、プロセス認識、コンテキストに依存してしまうことになります。OCRはRPAと同様に、ドキュメントからのデータ抽出という特定のタスクを自動化できるツールですが、その効果を得られるのは、この機能を包み込み、情報を提供し、指示する、プロセスインテリジェンスからなのです。個々にあるいは一括で処理される複雑な保険ドキュメントは、OCR認識が実行される前にAIを使用して、表や説明文に多く見られる複雑な可変情報を対象とした認識機能の方向性、コンテキスト、そして最も効率的な使用法を決定させることで、AIから最大のメリットを享受することができます。

それぞれのドキュメントには課題があり、保険のプロセスで作成されるドキュメントの量が増えるにつれてこれらの課題は指数関数的に増加します。機械学習(ML)と自然言語処理(NLP)の機能を使用するAIは、OCR中だけでなく、OCRの前に使用することではるかに効果を発します。OCRにかける一つの顧客ファイルには、数百のドキュメント(未完成かもしれないし、順序がバラバラかもしれない)に属する数百数千のページが含まれるかもしれません。そのため、画像パターンベース、テキストベース、フィールドベース、マークベースの識別子など、さまざまな方法を用いてドキュメントの識別、分類、認識にAIが長年使用されてきましたが、これらのすべてを組み合わせてインテリジェントに使用する必要があります。

AIを使用してより優れたOCRを構築しても、OCRの前に行う処理と同じ程度にしか機能しないにも関わらず、保険会社は、AIを組み込んだより優れたOCRツールはそれ自体で精度と自動化を向上させるという意見に誘惑されてしまうことがよくあります。OCR機能にAIを埋め込み、単一のプロセスでドキュメントを認識、識別、抽出しようとしても、拡張できません。特に、複雑なドキュメント、複数のドキュメントの種類、顧客ファイルのバッチ、保険会社で取り扱われる追跡ドキュメントなどでは。拡張を実現するためには、OCR認識前のドキュメントを識別して処理するための個別のサービスとしてAIを利用することが必要であり、初期入力からデータの公開・エクスポートまでのドキュメント処理プロセス全体でAIを利用することが最も効果的でです。Everestグループでは、このようなエンドツーエンドのプロセスでのAI活用を「インテリジェントなドキュメント処理(Intelligent Document Processing)」と表現しています。

プロセスがすべて

保険会社は、顧客とのやりとりを自動化したり、顧客からドキュメントを収集したりすることができるようになりましたが、そこからプロセスが崩れてしまうこともあります。プロセス内の特定のタスクを最適化するためのより良いツールを作成することで、これを直すことができます。AIは日に日に誇大広告され、特にAI、NLP、ML、イノベーション、科学といった格好いい流行語が多用されるため、本来サポートすべきプロセスを見失ってしまう可能性がありあります。カスタマーエクスペリエンスやそのドキュメント処理の際には、摩擦点、ドキュメントの複雑さ、処理要件を端から端まで明らかにする慎重なプロセスの発見を伴っていれば、AIの恩恵を受けることができます。

適切なツールを使用して、保険会社のエンゲージメントプロセスや、摩擦が発生しているその瞬間を発見することで、ドキュメント処理のボトルネックがどこで発生しているのかを正確に特定し、AIが効果的に対処できるようになります。効果的なAI技術(画像クリーンアップ、NLP、画像パターン認識、マーク認識)を使用して、画像の前処理、ドキュメントの識別、ページ付け、分類を、ドキュメントを受け取った時点で行うことで、それ以降の多くの作業を削減し、OCRの作業を最も効果的に行うことができるようになります。また、これらのプロセスを複数のチャネル、ドキュメントの種類、複雑さ、サービスレベルの要件に合わせて拡張することもできます。

カスタマーエンゲージメントはAI投資の新たなフロンティアであり、特に今、保険会社はこれらのエンゲージメントをシームレスに非接触型にする方法を模索しています。保険会社にとってのドキュメント処理の複雑さやドキュメント自体の複雑さは、優れたツール単体では解消されません。インテリジェントなドキュメント処理ソリューションは、プロセスインテリジェンスから始まり、エンドツーエンドのプロセスを変革するために必要なコンテンツインテリジェンスを組み合わせて、顧客の世界におけるエンゲージメントとの相互作用を実現しています。

保険プロセスの変革についての詳細は、こちらの新しい電子書籍「保険におけるデジタル・アジリティの加速」をダウンロードしてください。

※本コラムは以下の文章を意訳したものです。

引用元 https://blog.abbyy.com/ai-is-not-just-for-ocr/

※本コラムは原文執筆者が公式に発表しているものでなく、翻訳者が独自に意訳しているものです。

資料ダウンロード

このコラムを連載いただいている日商エレクトロニクスでは先駆者としてRPAの自社導入にも取り組んでおり、経営企画部、財務経理部、人事総務部の3部門でRPAをGRANDITE連携で導入し、ROI 590%と770万円のリターンを実現しています。そして成功事例の分析資料も以下のセミナーレポート内で公開しています。興味がある方は是非ダウンロードください。こちらにはガイドライン的なものも書かれています。

【レポート】ERP勉強会 次世代ERPに求められる条件
https://erp-jirei.jp/archives/1059

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!